甲斐くんの彼女。2 (ページ8)

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Kai.side

1年の冬

普段立ち入ることもない教室に入ると、先客がいた。

「せんせ、見て..!ほしが...」

キャンパスを前に、まん丸の瞳を窓に向けたまま話している女子。

「え、だれ?」

ただその瞳を俺に向けた時、その表情はお世辞にも可愛いとは言えなかった。

甲斐「柊、っていう先生に呼ばれたんだけど..お前こそ誰だよ」

「先生なら今、用事があるって言って出て行ったけど..」

ベタベタ、と絵の具を塗りながらこいつは言った。

「1年C組」

甲斐「A」

俺、そういえば3年間ずっとAだな。

なんて、今になって思い出す。

「Aか..景山澪奈って子知ってる?」

甲斐「あぁ..まぁ」

「あの子、私の友達なの」

俺はずっと覚えてる。

お前が景山と友達だったこと。

だからこそ..お前は俺を恨むって。

甲斐「お前こんな時間まで居て怒られねぇのかよ。」

時刻は8時で、強化指定部活の生徒が今やっと帰る準備をしてるぐらいだろう。

文化部がいる時間ではない。

「星の絵をね、描きたくて」

甲斐「星..?」

「うん。先生に相談したら、美術室からの星の眺めがいいから、それを見て塗るのはどうだって言われて。だから」

甲斐「仲良いんだな」

そんな風に生徒と仲良くしている柊の姿が想像できねぇ。

「..そうなのかな」

甲斐「..ん?」

聞き返そうとした時、美術室のドアが開いた。

「あ、せんせ。用がある生徒さんが来てますよ」

柊「あぁ、悪い悪い。
甲斐、お前宿題提出しないと成績が赤点になるぞ。
美術は授業回数少ないんだから」

甲斐「んな事どうでもいい」

柊「はぁ..そうだ、諏園。
お前少し手伝ってやってあげれないか?」

「はぁ!?」

柊「なんだ。お前、美術の成績いいだろう」

「いや、あの先生。私が気にしてるのはそこじゃなくて..」

ﾁﾗりと、こいつが描いてるキャンパスを覗き見る。

..初めて絵で感動、というものをした。

柊「じゃあ甲斐。明日は放課後、ちゃんと美術室に来るように。
じゃないと、諏園が1人で待つ羽目になるからな。」

すその、

「そんなことした日にはまじではっ倒すからね、甲斐くん」

サラりと俺の名前を呼ぶこいつ。

甲斐「ま、気が向いたらな。」

いつ、こいつに興味を持ったのかは分からねぇけど

いつの間にか..諏園のことを考えるのが多くなっていた。