甲斐くんの彼女。2 (ページ35)

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「..なんですか?」

美術室でさっきまで皆でふざけあってて。

教室に戻る時、急に先生に呼ばれた。

水越「よかったね、シャワー浴びれて」

なんて、中尾が戻ってきてからいつもの調子の涼音のニヤニヤした表情を思い出す。

柊「ここに座れ」

大人しく椅子に座ると、先生はｶﾁっと何かのスイッチを入れた。

「..唯月や愛華に怒られそう」

"自然乾燥なんて髪が痛むじゃん"

なんて愚痴をこぼして2人。

柊「協力者の特権だな」

ドライヤーの音で微かに聞こえる先生の声。

「..髪の毛サラサラじゃないですよ?」

染めてから、やっぱり傷んでしまっている。

柊「昔もこうしたな」

懐かしむ声。

先生がまだアクション俳優を目指してた時の話だ。

柊「よし、出来たぞ」

「..一颯くん」

ん?と向ける視線は優しすぎて..胸が締め付けられる。

「..無理しないでください」

柊「程々にな」

「死んだら許しませんから」

柊「無理な話だよ」

ぽんぽんと優しく叩かれて..余計に苦しくなった。

「馬鹿..」

伝えたい2文字は

どんどん簡単に言えなくなってゆく。

柊「A、」

しゃがみこんで顔を覗いてくる一颯くんが歪んで見えて、

泣き虫な自分が嫌になった。

柊「好きだよ」

でもこの人は容易く私が伝えたかったことを言ってしまう。

一颯くんと茅野は似てるかもしれない。

私が持ってないものを持っている。

「すき..」

繰り返すように口にすれば、先生は満足気に笑って頬を撫でた。

私の髪の毛を耳にかけると、そっと優しく唇に触れる。

「ふ、んｯ..」

漏れる息が甘くて。

恥ずかしくなって逃げようとすると、一颯くんの手がそれを防いだ。

初めて、

こんな甘いキスをしてくれた。