深紅の物語 (ページ8)

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部屋の中に入る。

当然のことながら、誰もいない、静まり返った部屋だった。

真っ白なベッドに、イース・リヴェルタを横たわらせる。

血で染まっている彼女の服は、冷たい。

流石に、コウ・クルススは、男なのでイース・リヴェルタを着替えさせるわけにはいかない。

しかし、このままだと、体が冷え切ってしまう。

「病人ですか？」

外から、震える声がした。

思わず、身構える。

しかし、姿を確認すると、武器を下した。

戦う意志は、ないようだ。

びくびくしながらも、部屋に入ってくる女神姿の少女は、マフラーを身に着け、口が見えない寡黙そうな少年を連れている。

「病人なら、私が見ましょか？」

なんだか胡散臭いような気がした。

「お断りします。」

「でも、あのままだと…。」

その発言には、困った。

「…」

「私は、女ですから。」

コウ・クルススは、一瞬黙ったが、このままではイース・リヴェルタが危ない、と考えた。

「お願いします。」

その瞬間、女性は中に入っていった。

マフラーをまいた、少年が残る。

すらっとした体だが、コウ・クルススと同様、低身長だ。

「…お名前は？」

コウ・クルススは、慎重に尋ねる。

なんとなく、刺激したら厄介なことになりそうだ。

「…私の名前は、ウィステリア・レイン。」

「俺は、コウ・クルススです。」

お互い、顔を見合わせる。

口もとは見えないが、容姿端麗と言っていいだろう。

だが、若干吊り気味の大きな目は、冷たい。

水色の目は、コウ・クルススを映していない。

息が詰まりそうで、思わず下を見る。

そこで、コウ・クルススは、初めて、彼のブーツに、ディベルティー・ローズの髪の毛が絡まり、彼女の首だけがここまで引きずられてきていることに気づく。

「それ…。」

下を見たウィステリア・レインは、悲鳴を上げずに、足をどかす。

「どうも。」

慌てるそぶりは一つもない。

と、そこに先ほどの女性が戻ってきた。

「まあ！！」

こちらは、悲鳴を上げる。

涙さえうかんでいる始末だ。

「大丈夫だから。」

ウィステリア・レインは、彼女を落ち着かせるように言うと、首を自分のマフラーで隠した。