深紅の物語 (ページ5)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:2,662 hit

ーページ5

「誰だよ、あんた！！」

ディベルティー・ローズの目の前に、突然現れた黒ずくめの人。

華奢で、今にも壊れそうな低身長のひとには、見覚えがある。

「クルスス！」

大きく叫んだ瞬間、また激しくせき込んだ。

「あんた、あたいの勝負に口出しは無用だよ。」

ディベルティー・ローズは、怒鳴る。

むろん、この手は、どう考えても彼に通用しない。

「あなたは勝負に負けただろう。」

銃を構えられても、この余裕である。

「ふん、あいにく、まだ勝負は続いているのさ。」

言い訳がましいセリフを口にした後、クルススの姿をてっぺんからつま先までじっくりと眺める。

「…あんたは、あたいより魔力がないね。」

一気に楽しそうな顔になった。

勝利を確信すると、人は、このような表情になるらしい。

クルススは、まだ咳き込んでいるイース・リヴェルタに顔を向けて、ディベルティー・ローズに言い放つ。

「これでも、まだやるつもりか。」

ディベルティー・ローズは、言葉に詰まる。

「あなたは負けた。その事実は、変わらない。」

ディベルティー・ローズは、膝からゆっくりと崩れ堕ちた。

「…負け、か…。あたいは、負けたんだ…。」

首に、うっすらと切れ目が入る。

血が、滴り落ちる。

首は、一旦横にずれるとそのまま地面に落下した。

ドスン、という音がする。

周りは一瞬、静まった。

「どういうことですか？」

いつの間にか、イース・リヴェルタが起き上がっている。

その表情は、ひどく苦しそうで、血の気がなく、真っ白だ。

「なんで死んで…。」

刹那、激しく咳き込む。

コウ・クルススは、そんな彼女をチラッと見ながら、あることを確信していた。