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透明な雫が丸い頬を弧を描いて滑り落ちる。
まな板にぽとぽとと涙の水滴が、円を作って、それが何重にも広がっていく。
「…………」
トントントン。
規則正しい、包丁の音。
「Aさん………」
「…………」
「Aさん！！！」
トン、と最後の人参を切り終えて、Aが顔をこちらに向けた。黒い瞳が濡れて光っている。ただでさえそれほど色のない肌は、真っ青になって、唇がかすかに震えていた。
「………あなたに話して、何になるっていうんですか」
「………それは…」
「無駄ですよ。最初に言っておきます。どうか放っておいてください。放っておいてくれたら、何もかもうまくいくんです」
「……なにを、いったい何の話をしているんです？」
「聞こえませんでしたか？ あなたには関係ない」
「………そんなことありません」
ぽたぽたと涙が流れて落ちていく。
その涙をぬぐうこともせずに、まっすぐ俺を見つめるAは今まで見たこともないような顔をしていた。
残酷で、冷徹で、諦めていて、それでいて、
どうか助けてくれと、心の中で悲鳴をあげている_________そんな顔だ。
俺は静かに苦笑した。
「Aさんって、意外と普通なんですね」
「………はい？」
突然の俺の言葉に、Aが怪訝そうに眉をひそめる。
ああ、馬鹿だな、こいつ。全然分かってないじゃないか。
俺にあんなに偉そうに説教垂れたくせに。
俺と同じなんだよ、お前も。
器用だから、なんでもできてしまうから、だから自分がもう限界だってことにも、そんなことにすら、自分で気が付けないんだろ。
「本当は助けてほしくて、どうしていいか分からなくて、助けてって叫びたいのに、周りを巻き込みたくないから我慢していると自分では思いこんでいるけど、本当はただ、単純に自分の中にある問題と向き合うのが怖いだけ……そんな感じ」
な？ そうだろ？ 俺は手を伸ばしてそっとAの頬を流れる涙をぬぐう。
「分かるんだよ。俺と君は似てるから、な」
「………いうな」
「え？」
どん、と胸を押された。いきなりの衝撃に思わずよろめく。Aが顔を歪ませて、肩で激しい息をしている。目が血走って、顔色は真っ青だった。
「Aさん」
「黙れ。黙れ………頼むから、黙ってくれ。放っておいてくれ、頼むから」
「無理だ。できない」
「安室さん………」
「君を、助けたい」
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
