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「優しいのね」
甘い香水の香りが鼻腔を満たした。
柔らかな双丘に抱かれる。
細く長い指が、俺の痛む頭をゆっくりと撫でた。
抵抗しようと思ったが、低いうめき声がこぼれただけだった。
やめてくれ。頼むから。
やめてくれ。
「わたし、感動したのよ……さすがはシルバーブレットのお兄さん、ね。
自分が傷つくのも構わずに、女の子を助けてあげるなんて」
あなたは優しいわ、と甘い声が耳元をくすぐる。
「やめろ……」
「ねえ、あなたのこと、手放したくないわ…」
「やめ、ろ………」
「シルバーブレットはわたしのものにはならないし、なる必要もない………でも、ときどき思うのよ。
彼のような人が、わたしのそばにもいてくれたらって…ね」
「やめて……くれ…」
唇が耳に触れる。熱い。酒の匂いがかすかに漂った。
「わたしのそばにいてくれない……？ あなたはステキだし……勇敢で…優しいわ」
びくびくと体が震える。
視界が真っ暗になった。体が火に焼かれているようだった。もう死ぬんじゃないかと思うくらい、頭が痛い。
「やめろって、言ってるだろ……！！！」
最後の力を振り絞って、俺はクリスを突き飛ばし、ソファから転げ落ちる。
「………大丈夫？ どうしたの？ あなたおかしいわ」
クリスが駆け寄ってきたが、その手を振り解く。
「おかしいのは……おまえ、だろ！！ 何しにきたんだよ……おれは、あんたのことっ…ゆるしてない…からなっ…」
「何の話？ しっかりしなさい」
水を持ってくるわ、と背を向けたクリスを見た瞬間、俺の心を形容できないドス黒い怒りが支配した。
俺に背を向けるその姿が、ぴたりと母親と重なった。
そう。俺は許していない。
あんたのことを……許していない。
二度も俺の人生をめちゃくちゃにさせてたまるか。
俺はどうせ、あんたには愛されないんだから。
どれだけ生まれ変わっても、俺はあんたにとって憎いだけの存在なんだから。
わかってるんだ、そんなことは。
わかってたさ。
母さんが、俺のことを愛していないってことくらい。
ずっと、知ってたさ。
ふらふらと立ち上がった。
また足がもつれたが、歯を食いしばって耐える。
唇から血が滲む。
背後からクリスにゆっくりと近づく。
気配を感じて振り向いたクリスの白い首を、俺は掴んで締めあげた。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
