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「わたしのこと、知っているように見えたわ」
俺は痺れるような酒の味を、ゆっくりと味わう。
早くも体が熱くなり始めていた。
まずいな、と思ったが、ここから抜け出せる術も思いつかなかった。目の前のこの女から、俺は一生逃れることなどできないのではないか_______、酒で思考回路がうまくまとまらない。
どうして、俺の前に現れたのだ。
もう二度と、思い出したくなかったのに。
「………ねえ、さっき妙なこと言ってたわね」
何も答えない俺に、クリスがさらに言い募る。
「昔虐待を受けてたって………どういうことかしら？」
「そのままの、意味ですよ」
クリスは目を細める。
頭も痺れてきた。
「……有希子はあなたのこと、溺愛してたけど？」
有希子、という名前にびくっと肩が震えた。
有希子……母さん。俺の母さん……本当の、母さんじゃ、ない……俺の母さん。
「有希子があなたを虐待してたなんて、にわかには信じられないわ」
俺を、愛してくれた。
母からの愛を知らなかった俺に、すべてを与えてくれた。
「……母さんは、俺の母さんじゃないから、な…」
「ねえ、さっきからどういう意味なの？それ」
苛立ったようなクリスの声に、かわいた笑い声がこぼれる。
少し驚いたように、クリスが目を丸くした。
「あんたには、わかんねえよ……誰にも、わかんねえ……くそ、頭痛え」
「…………」
俺はがんがん痛み出した頭を抱えて、うずくまる。手元が震えて、ワイングラスが床に落とした。パリンと音がして、ワインがカーペットに血のような染みを作る。
なんで。
なんで。そっとしておいてくれないんだ。
俺は、もう忘れたいのに。
ずっと忘れようとして、生きてきたのに。
目の前の女を睨む。
ああ、皮肉なほど似ているな、なんて。
前世の母は、美しい人だった。
日本人だったが、遠い異国の血を引いていて、彫りの深い顔立ちを、濃い化粧でいつも飾り立てていた。
白い陶器のような肌。
波打つ金髪。
夜に舞う桜のような、紫のルージュ。
母そのものだ。
心がかき乱される。
呼吸がうまくできないほどだ。
どうして今更、俺の目の前に現れたのだ。
もう一度、俺を虐げるためか？
それとも、今度は俺を愛してくれるのか？
「…………恨むぞ、神様」
ぐにゃりと歪む視界の中で、紫の花弁が蝶のようにちらちらと舞った。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
