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「A！？ おいA！！？」
俺の叫び声が空回りするように、空っぽのトイレにこだまする。
その時背後から誰かが近づいてくる気配がした。動いたのは本能だ。咄嗟に俺は手を伸ばして、それを床に押し倒す。
そしてまたしても驚きに目を見張った。
「あかい、さんっ………」
「A！！？」
床に押し付けたせいで、苦しそうに喘ぐA。少し怒ったように俺を睨んでいるAは、先ほどの妙に意識が不明確そうな彼ではなく、いつもとなんら変わらない。
俺は混乱しながら、すまん、と謝ってAを開放した。
「どうしたんすか？ そんなに焦ったみたいに俺の名前呼んで」
「…………君なぁ」
あっけらかんとしたAの顔に、深いため息がもれる。
心配して損したと思う一方で、どこか様子のおかしいAがいなくなっていることに心底安心している自分がいた。
「急に消えたりしたら心配するだろうが。様子もおかしかったし」
「……そうだったかな？ 寝ぼけてたからよくわかんねーな。すみません」
「トイレに行ってただろう。今までどこに行っていたんだ」
Aはぽりぽりと頭をかきながら、んー、と首をかしげる。
「どこって……自分の部屋？」
「自分の部屋？ どういうことだ、訳がわからん」
俺が睨むとひっ、とわざとらしく怯えたような声を出して、後ずさる。………まったく。
「違いますよ、一昨日から部屋の窓開けっぱなしだったなー、って。思い出したから、さっき閉めに行ってただけっすよ」
「病み上がりのくせに変な気をまわすな。言ってくれれば、俺が閉めに行くだろう。頼むから無駄な心配をかけさせないでくれ」
「もう治ったから大丈夫ですよ。あ、それより今日はクリームシチューっすか？」
背後からわくわく、と効果音が流れてきそうな様子で、俺を嬉しそうに見るA。
俺はもう一度大きなため息をつく。
最後はやっぱり敵わない。
やれやれと肩をすくめる。
「こんなに甘いのは君だけだからな、他のやつだったら殴りとばしているところだ」
「こえー……赤井さんが言うと洒落になんねえ」
俺は本気で青ざめているAの体を引き寄せて、柔らかな黒髪をくしゃくしゃと撫で回した。すぐに不機嫌に抗議の声があがったが、あんなに焦らされたのだ。
これくらいはまあ、許されてしかるべきだろう、と。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
