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ボウヤが帰った後、俺は夕飯を作りながら、江戸川乱歩の大金塊を読んでいた。
世紀の大怪盗怪人二十面相と天才名探偵明智小五郎の熱い頭脳戦を描いている作品が多い中で、大金塊で用意されている敵役は美しい女盗賊。シリーズのなかでは、少し異彩を放っている。
孤島の宝物をめぐる大冒険は手に汗にぎるものがあり、普段日本のミステリを読まない俺でもなかなか面白い。
しかしなぜ、この本なのだろう？
クリームシチューをかき混ぜながら、本を片手に考え込んでいたら、もぞもぞとソファで起き上がる気配がする。
振り返ると、Aが毛布をどけてソファから立ち上がっていた。
どうやらトイレにでも行くようだ。
寝ぼけ眼をこすりながら、ぼうっとした様子でふらふらとリビングを出て行く。
「おい、A。こけないように気を付けろよ」
笑いながら俺が声をかけると、Aは一瞬びくりと肩をふるわせた。そして俺を見て、きょろきょろと目をさまよわせる。
「A？」
Aは俺の呼びかけにふい、と横を向くと、早足で部屋を出ていく。
なんだか妙な気配がして、俺は鍋の火をいったん止めると、本をおいてAの後を追いかけた。
Aは丁度トイレのドアを開けたところだった。やはり用を足すだけだったのか？
少し悩んでから、俺は遠慮がちにトイレのドアをノックした。
「おい、大丈夫か？ 気分でも悪いのか？」
「………だいじょうぶ、だから。きにしないで」
くぐもった返事が返ってきた。
何かあったらすぐに呼べよ、とだけ言い残して、俺はリビングに戻った。
しかしいくら待ってもAは帰ってこない。本当に大丈夫なのか。まさかトイレの中で倒れたりしてないだろうな。
嫌な予感がして、急いでトイレに戻る。
トイレには明かりがついたままで、嫌な予感は増幅する。
A、と呼びかけて、はっとした。
扉が少し、外側に開いている。俺はドアノブに手をかけて、おそるおそるドアを開く。
「A………っ！？」
白い電灯が、それほど大きくないトイレの個室を隅々まで照らしている。
大の男が隠れる場所など、無論どこにもない。
俺は背筋に寒気が走るのを感じた。
Aの姿は、どこにも見当たらなかった。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
