episode105 ページ15
茜色に染まった街を眺めながら、あらためてミズシマに殺されなかったことを幸運に思った。
「……あのね、赤井さん」
「ん?」
赤井さんの声は、いつもと同じでぶっきらぼうだ。
でもその、愛想のない、飾らない声が、私はなによりも好きなのだ。
「私、この前のテストで英語、11位だったんだよ!? すごくない!?」
シートベルトから身を乗り出して、すごくないすごくない? と連呼する私に、赤井さんはめんどくさそうな視線を投げる。
「ああ。そうだな、すごいすごい」
「なにその適当な返事! 赤井さんのために頑張ったんだよ!」
そう言うと、赤井さんは少し目を見張った。何故かふっと思いつめた顔をして____そして、黙って私の頭をくしゃくしゃに撫でる。
「な、なにするの!!」
「……勉強は自分のためにやるもんだろう」
私はぷう、とほおを膨らませた。
これだから、鬼畜FBIはどうしようもない。
「誰かのためって思ったら、人間はいつもよりもっと頑張れるんだよ!
愛の力ってやつだよ! 知らないの!?」
今度こそ、赤井さんは黙りこくった。
私は仕方なく、赤井さんに「愛の力」の偉大さを解説してあげようと口を開く。
「愛の力っていうのはね、赤井さん。
その人のことを考えるだけで、勇気が湧いてくる力のことだよ。
まあ赤井さんは友だちも恋人もいなさそうだから、今まで知らなかったのも無理ないけど…。
あ、私もね、赤井さんのことを考えると勇気が出るの! あと、胸の、この…真ん中あたりが、ぽわってあったかくなって…」
「もういい分かった」
赤井さんはますます仏頂面になって、何故か私の貴重な講義を遮った。つくづく失礼なやつめ。
「本当にわかってるの? これ、重要だよ。FBIの昇格試験に間違いなく出るよ」
「……間違いなく出ないから心配するな」
「むきっー!! またそういうことを!!!
でも生きてく上では必要でしょ?」
赤井さんは何も言わない。
表情が影って、何を考えているのか、よく分からなかった。
赤井さんは、どうだろう?
私のことを考えると、勇気が出たりするかな____そうだと、いいな。
…まあ、でも、なんでもいいけど、さ。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月22日 11時) (レス) @page23 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
みー - 主人公ちゃんも赤井さんも魅力的で何度も読み返しちゃいます、、いつかまた戻って更新されてるの楽しみにしてますね! (2021年8月31日 20時) (レス) id: fa7939d4a9 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 面白かったです。更新楽しみにしています!!! (2021年6月2日 2時) (レス) id: 3c947ce476 (このIDを非表示/違反報告)
ふわ - めっちゃくちゃおもしろかったです! (2021年4月23日 17時) (レス) id: 1d6a9bd8f3 (このIDを非表示/違反報告)
キサキ(プロフ) - 面白くて何度も戻ってきて読んじゃいます、更新お待ちしております頑張ってください!!! (2020年10月20日 10時) (レス) id: a8bb3b0a09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海星 | 作成日時:2019年9月30日 12時