【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ2)

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「お初にお目にかかります、総統殿。この度交渉のためにX国より参りましたAと申します。至らぬ未熟者ではありますが、隣国として友好を望んでおりますためどうぞよしなに」

堂々とした佇まいとふわりと微笑むその姿に各々がその場で言葉を探す中、ゾムだけがゆらりとAの前に立った。

「ただでさえ人質とか邪魔やのに、さらに女なんか」

嘲る意図を隠さないゾムに慌てたように静止の声をかけるオスマンを無視して、さらに少しだけ腰を曲げて至近距離でAの存在を否定する。

「弱い奴に興味ないねん。さっさとどっかに失せろ」

低く威嚇するようなゾムの言葉にも怯む様子のないAは、あろう事かニッコリと笑みを見せた。
しかし、ゾムを映す髪と同じ真紅の瞳は一片たりとも笑ってないことに気づいたのはそばにいたオスマンとゾムだけだった。
ゾムがふとAの下ろされている右手を視界に捉えた瞬間。

乾いた音が響き渡った。

その場にいたA以外の全員が我が目を疑った。
右手を振り上げ、振り切った状態で冷たい視線を向けるAに対し、Aの前にいたゾムは顔を右に逸らしていた。

ビンタされたのだと、ゾムも含め全員が認識するとAは冷たい視線をゾムに向けたまま言い放つ。

「貴方がどういった意味で私を弱いと言ったのか分かりかねますが、それがたかだか武力を指すのであれば心外もいいところ。貴方のような礼儀を知らない人に私の強さを勘違いされたくない」

キッパリと拒絶を含んだ言葉にゾムはゆっくりとAに視線を戻し、オスマンはハッとした様子で数秒後に訪れるだろうゾムの暴走に備え腰元のナイフに手をかけた。

ゾムの機嫌が更に急降下し、一瞬にして殺気が会議室の隅まで支配した。
その緊張感の中で、均衡を崩したのは1人の男の高笑いだった。

「アッハッハッハッハッ！！マジかゾムお前ビンタされとるやん！あのゾムが！！めっちゃおもろいやんけ！！」

「バカ…コネシマ！」

焦ったように声を荒らげるシャオロンにも構わず笑い転げるコネシマに、ゾムの肩がゆらりと揺れ音もなく振り返る。

「…シッマぁ」

低く唸るような声を合図に「やべ」と呟いて椅子を蹴倒して窓から逃げるコネシマとゾムの追いかけっこが始まったようだ。
騒がしい2人がその場から消え、静まり返った空気をどうするんだと皆が最高責任者であるグルッペンを見遣れば、それを理解したグルッペンが眉を顰めながら大きく咳払いをする。