37話 あらあら。どうしたの ページ37
‧✧̣̇‧＿＿＿rd.side
『らださん、らださんだぁ……』
目の前で、すでに赤く腫らした目を潤ませて俺の名前を読んでいる
彼女は…Aとはハイスクールの頃からの仲だった
俺の生まれは普通だったからもちろんAの通うお嬢様学校には足を踏み入れたこともない。
俺たちの出会いの話なんて面白くもなんともない
〈rd「……あの、落としましたよ。コレ…」〉
水色のリボンがついた栞
表面は誰が見てもわかる子供が描いたような似顔絵はどことなく落とした本人と髪の長さや見た目に面影がある。
裏面は水色の小さな花、花の名前なんて知らないが全体的に小学生が図工か何かで作ったような、そんな栞
〈『えっ、あっ！！ほんとだごめんなさいｯ！！ありがとうございます！！』〉
彼女は大慌てで両手で包み込むように栞を受け取った。何度もありがとうありがとうと言いながら、大事な弟がくれた物だとはにかんだ
＿＿＿＿＿＿そこからは、早かった。
たまたま通りかかる公園のベンチで小説を読む彼女は絵になった。
市内で有名な嬢学校の制服を着た彼女の名前はA・カエルラ・マーナガルム
マーナガルム家はここら辺では知らない人はいないとされる王族に繋がる有名な家系。
北欧神話に出てくる狼"月の犬"を意味したファミリーネームだと、声がでかい幼なじみが焦りながら伝えてきた
週に何回か、公園のベンチで本を読む彼女と二三言話して帰る。
隣に座ったりしない。俺は立ったままで、彼女は弟のエレメンタリースクールが終わるまで座って待っていた
〈rd「……またそんな幼稚な本読んでんの」〉
〈『弟が借りてくるの、案外面白いんだよ』〉
口を開けば弟の話をするAに、神話の狼なんて大層な家系を背負ってるとは到底思えなかった
年下だった彼女はハイスクールが終わるであろう季節に涙を零しながら小説を読んでいた。
桜が舞っていた
小さな桃色の花びらは寄り添うように、嘲笑うように彼女の本の隙間に落ちていく
暖かくて優しい陽の光に包まれて、涙が反射して光っていた。
不謹慎だけど
rd「(…綺麗だなぁ……。)」
〈『らださん、私、私さｯ…もう帰りたくないんだｯ』〉
(家系も親も親戚も他人も大嫌いだ、と)
(地位も名声も財産も価値も、本当は何もかもいらなくて)
(弟と平和に暮らしたいだけなんだ、と)
(華奢な背中には、俺には到底支えられない"価値"を背負っていた)
38話 ギラギラ。狂犬の目→←36話 らだらだ。コバルトブルー
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2567人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れい - 続編が公開されていますが、こちらでコメントします。イラストが凄すぎたので！占ツクで見た絵の中で、最高です！小説も絵も上手とか神ですわ() (2022年5月22日 9時) (
レス) @page31 id: c6bb2f889c (このIDを非表示/違反報告)
にた - 更新ありがとうございます！！！今回もすごく面白かったです！！！本当にありがとうございます！！！！！ (2022年1月16日 11時) (レス) @page42 id: 1488c03ef9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - やったー！！！更新されてるぅぅ！！ありがとうございます！待ってました！ (2022年1月15日 19時) (レス) @page42 id: 01548bf821 (このIDを非表示/違反報告)
Moshita(プロフ) - 何回も読むぐらいこの作品が大好きです！いつか続きが出る日までいくらでも読み返します！ (2021年9月15日 12時) (レス) id: 3e1a8a6779 (このIDを非表示/違反報告)
空猫 - 全部の作品読んでます！！もう大好きです！またいつか続きを出してくれると嬉しいです！ (2021年7月1日 18時) (レス) id: 0925ca16ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
