. ページ21
.
「…Aさん、俺やっぱ抱けへん、」
本当に、最低だ。ごめんね、向井くん。
泣きたいのは向井くんも同じなはずなのに、泣いてはダメだ、と思えば思うほど涙が溢れて止まらない。
「…ぅう、」
向井くんは体を起こすと、私の腕を引っ張りそのまま抱き締めた。
「何があったか知らんけど、翔太くんはほんまにアホや」
こんな一途やのに、といつもより何倍も優しい声で言う。
「…向井くん、」
「謝らんでや」
ごめんね、と言おうとした事が伝わったのか被せるようにそう言った。
「…好きです、」
私を抱き締めたまま言う向井くんの声は震えていた。
分かっていても言葉で聞いたのは初めてで、向井くんの気持ちが痛いほど伝わり胸が苦しくなる。
「やから、今日は俺の胸貸します。
…ほんまは俺がそばにいたいだけやねんけど」
体を離すと、私の顔を見ていつものように笑った。
そばにいたいだけ、と言いながら本当は私の事を心配してくれているのだろうと思ったら、少し涙目の向井くんのその優しさに更に胸が苦しくなる。
向井くんを好きになれたら、きっと幸せなのに。
好きになりたい、と思っても、そう考えている時点で好きになる事は出来ないんだ。
「…ありがとう」
ごめん、なんて言っちゃいけないのだと、向井くんを見て思った。
ありがとうが合っているのかは分からない。
でも何かを伝えなければ謝ってしまいそうで必死だった。
そのあと、私たちはさっきの出来事が無かったかのように他愛もない話をしながら眠りについた。
きっとお互い、今だけは現実を見ないようにしていたかったのだと思う。
向井くんの腕の中で寝ていたはずなのに、目が覚めたら向井くんはもういなかった。
.
1110人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
バンビ(プロフ) - カレソさん» カレソ様、コメントありがとうございます。感想を頂く事が何より励みになります。最後まで読んで頂きありがとうございました。 (2020年9月20日 20時) (レス) id: 290b31182b (このIDを非表示/違反報告)
カレソ(プロフ) - 完結されていたので一気読みできて最高でした。とにかく胸が締め付けられて涙がちょちょぎれてしまいました。素敵なお話ありがとうございます!今後も応援しております。 (2020年9月20日 18時) (レス) id: 38540f6201 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - かなさん» かな様、コメントありがとうございます。もっと皆様に楽しんで頂けるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2020年9月6日 23時) (レス) id: d49da2a08d (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - びっくりするくらい思わせぶりな行動が多いくせになにもこっちには与えてくれない感じが苦しいんですけど好きです!続き楽しみにしています。 (2020年9月6日 22時) (レス) id: d4d46f8c31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:バンビ | 作成日時:2020年8月31日 1時