爆豪vs切島 ページ32
戦いの終わった私は、観客席へと戻った。
今は...かっちゃんと切島くんか。思ったより難航してるな。
｢あ、Aちゃん！凄かったよさっき！！｣
｢常闇のやつあっという間に攻略してさー！瞬殺かよ！｣
そう褒めてくれる麗日さんや、上鳴くんたち。
｢いや...対策が理にかなってただけだよ。キャパのこと考え過ぎて荒っぽいやり方しちゃったし、もっと慎重にやれば良かった｣
というのは建前で、さっきは頭の中がぐちゃぐちゃで、ただ早く終わらせようと先を急ぎすぎた。
考えることが、いっぱいいっぱいなんだ。
『ああー！！効いた！！？』
その声で前の方を見ると、かっちゃんの攻撃をもろともしてなかった切島くんが態勢を崩していた。
｢てめぇ、全身ガチガチに気張り続けてんだろ。その状態で速攻仕掛けてちゃ、いずれどっか綻ぶわ｣
｢くっ...｣
攻撃を次々繰り出すかっちゃん。
｢死ねぇ！！｣ BOOOM！
そしてついに、切島くんが倒れた。
｢まぁ、俺と持久戦やらねぇってのもわかるけどな｣
『爆豪えげつない！連続爆撃で三回戦進出！！
これでベスト4が出揃った！！』
これで私の相手は、かっちゃんに決定か。
容赦してくれないからなぁ、かっちゃんは。痛いの覚悟でやんなきゃいけないか。
はぁ...さて、
私は、どうするべきか。
___『君の"個性"は_____________為にあるんだ。誰も救うことなんて出来ない』
｢ｯ...違う。私の"個性"は、その為のものじゃない｣ ボソッ
脳内に流れる、あの忌々しい記憶を否定するように、誰にも聞こえない声で呟いた。
思わず右手で抑え込むように握りしめてしまった左手首から、軋む音が聞こえ、深呼吸をしてから、落ち着いて手を離す。
目立つのが嫌いな私が、体育祭でこんなに必死になっているのは...まぁ、挑発に乗ったというのが、一番の理由だ。
けれど、私の価値は、アイツの言うようなことなんかじゃないと、体育祭で証明したいと考えていたのも少なからず理由の一つだ。
皆みたいなまっとうな理由じゃないんだ。
私と皆では、根本的に違うのだ。
その違いを、そのわけを。
自覚した、してしまった。
今日の皆を見て、思い知らされた。
ずっと、目を背け続けてきたことを、今更...
私は、今までの自分に、疑問を抱いてしまった。これでいいのかと。
不安が波のように押し寄せてくる感覚があって、それが妙に気持ち悪い。
｢あー...嫌だ。本当に｣
けどもう、後には引けないのだから。
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作者名：夢桜 | 作成日時：2019年3月20日 20時
