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S「本来なら、一晩で通り過ぎるはずの人間を、お前はいつまでも忘れられなくて、彼女は頼れる会社がなくなって、俺はその事実がわかる場所にいて」
S「俺は彼女を助けられるけど、ここにはお前がいるから、本来なら手を差し伸べるべきじゃない」
S「でも、俺は彼女に少なからず情を持ってしまっているから」
S「ちょっとさ、柄にもなく、運命を感じたんだよ」
S「俺がこの状況を無視しなかったら、本当に何か起きるなら、今度は俺の手におえることじゃないなって思って」
S「何が起きるか、見たかったんだよ」
俺は、珍しく饒舌なセジンヒョンの話を黙って聞いていた。
本当に柄にもなく、運命なんて言葉を言ったセジンヒョンと、言わせた俺とAとのことを、俺自身何て表現したら良いかわからなくて。
S「グクの好きにしたらいいよ」
「えっ」
S「俺が何も手助けせずにAさんを見付けることができたら、もう何も言わないって決めてたよ」
ぱか、と口があいて、ヒョンは笑いながらその手で俺の顎下に指先を当て、押し上げて閉じてくれた。
S「がんばれ、ジョングク。今度は逃げられないようにな」
ぶわ、と一気に顔が熱くなる。
今までダメって言われてたのに、急にそんな応援とかされたら、何て返事したら良いかわからない。
とりあえず、
「何言ってんの?ヒョン。当たり前」
てうそぶいてみたけど、ほんとは。
Aをここに連れてきてくれて、
ありがとうって。
言いたかったんだ。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年11月28日 0時