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声をかけられて何の気なしに振り返った彼女は、急にひどく驚いて、大きくのけぞった。


そしたら、



バキっ




て、わりと聴き逃がせない感じの、嫌な音がして。

その場にいた全員が、あ、って思ってたと思う。


視線が一気に集まる中、彼女が背中で押した枝が、大きくブランと下に垂れ下がってしまっていた。


TH「あー!…ああ…すみません。俺が急に声を掛けたから…」


ヒョンが慌ててる。

彼女は肩を落として、もう一度テヒョンイヒョンを振り返ったけど、テヒョンイヒョンに気を取られて、俺に気付いていないみたい。

それを良いことに、じろじろ上から下まで眺め倒し、顔もよくよく見てみたけれど、まずマスクがあるからどんな顔の人か全然分からない。

髪も短すぎるし、体型も細すぎる。

どうせまた違うだろ、と俺は、もはや慣れきっているがっかりを受け止めていた。

TH「すみません、セットのラフを見て、撮影前に見たくなっちゃって」

折れた枝と彼女を行ったり来たりと首を振りながら、テヒョンイヒョンは恐縮したように謝ってる。

実際、みんな至近距離でテヒョンイヒョンを見たらその顔面の破壊力に死ぬほどびっくりするみたいだし、結果的にテヒョンイヒョンの破壊力で破壊されたようなもんだから、謝っとけ謝っとけ、と俺は他人事だった。




そしたら。




『いえ!私が勝手に驚いて、壊しただけです。テヒョンさんは悪くありません。グルーですぐに直せますから、少しだけ待っててもらえますか?』





ちょっと待って。

すごくなめらかに話してるけど。









風邪じゃないな、この声。

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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年11月28日 0時

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