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きっと内心では寂しさを感じている中でも、Aちゃんはいつも明るい。
わたしが体調を崩したときだって、ニコニコしながら看病してくれる。わたしが外に出られない時も、くるくると表情を変えながら外の様子を教えてくれる。わたしはAちゃんが大好きだ。
だから、ついつい、ちょっとだけ、老婆心が出てしまった。
「Aちゃん、見て」
「便箋?」
「そう。この前Aちゃんにぴったりだなって思って、買っちゃったの」
可愛らしいデザインの便箋セットを差し出して、「よかったらもらってくれないかしら?」首を傾げた。それは先日体調の良い日に散歩がてら訪れた文具屋で購入したものだ。
対して、「いいの!?ミツバ姉」目を輝かせて言うAちゃん。
「当たり前よ。Aちゃんにはいつもお世話になってるもの。お手紙、誰かに送ってあげてね」
お江戸と武州。距離は離れてしまっているけど、文通ならできる。余計な事かもしれないけれど、何かのきっかけになったなら。
だって彼女はわたしの妹分で、それに――総ちゃんの、大切な、大好きな女の子だから。あの子は素直じゃないから中々認めないけれど。
素直で優しい女の子と、不器用で意地っ張りだけど、本当は優しいあの子。お似合いだと思ってしまうのはおせっかいかしら。つい、じれったい二人の背中を押したくなってしまった。だってこんなに可愛い妹ができるなら、それに越したことはないんだもの。
願わくば可愛い可愛いふたりが、手をとって笑いあうところを見てみたい。わたしの体でそれが叶うのかはわからないけれど……、きっと、願うだけならばタダでしょう?
目の前ではAちゃんがそおっと便箋にふれている。そこにしたためられるものは一体何を描くのか。総ちゃんのことだから、中々素直にはなれないだろうけれど。でも、その先に幸せが待っていますように。
小さなおせっかいを焼いたわたしは、まだ見ぬ未来を思って少しだけ微笑んだのだった。
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文 - 何年経っても色褪せなくてついまた読み返してしまいます。ふっと笑えるところもあれば切なくなるところもあって、最後には幸せな気持ちになれて本当に胸がいっぱいになる作品です。 (12月2日 23時) (レス) id: 83faa383a3 (このIDを非表示/違反報告)
リィ(プロフ) - どんな幸せな終わり方だよォォォォォォ!!!!滅多に泣かないはずのボクが号泣するとかァ!!!めっちゃ面白かったです!神作品だぁ… (2022年5月18日 11時) (レス) @page40 id: a9f70234e2 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 序盤めちゃくちゃニヤニヤしながら見てたけど後半号泣してしまった…最高… (2022年5月15日 0時) (レス) @page40 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
ナナナ(プロフ) - なんですかこの神作品は。。。2時間かけて一気に読んでしまいました。。笑って泣ける、本当に本当に最高の作品でした。ありがとうございました、( ; ; ) (2022年4月26日 2時) (レス) @page40 id: 6431d8432b (このIDを非表示/違反報告)
なかむら(プロフ) - ぺさん» 遅レスすみません汗 書簡集、恋文の技術です!!森見さん大好きで……!同士の方と巡り合えてとても嬉しいです!もちろんこちらの夢小説はあちらの足元にも及びませんが(笑)、楽しんで頂けていたら幸いです! (2021年2月25日 21時) (レス) id: cefa07e7cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年3月4日 15時