小さなおせっかい ページ39
「きょうも冷えるね、ミツバ姉」
「そうねえ、明日も雪が降るってお隣のおばさまがおっしゃってたわ」
「ほんとう?じゃぁ雪だるま作れるかなあ」
炬燵台の上に両手で頬杖を突きながら目をきらきらと輝かせる少女。その姿に、思わず笑みがこぼれた。
総ちゃんが近藤さんたちと共に武州を出てから、冬の季節が巡ってくるのは初めてだった。しんしんと雪の降るこの季節はこんなにも静かだったのだと、わたしは初めて知った。あのひとたちはいつどんな季節であっても、騒がしく、あたたかくしてしまうから。
思い出すだけで胸の奥が温かくなる。今は武州を遠く離れて、お江戸で笑っているだろう、彼ら。
あの日、志と共に武州を発ったあのひとたちを見送ったのは、わたしだけではない。今目の前にいるこの少女も、わたしとともに彼らを見送っていた。
「Aちゃん、お夕飯今日もうちで食べていく?」
「いいの!?ミツバ姉」
もちろんよ、と笑えばAちゃんも嬉しそうに笑った。最近は体調が良いから、時折Aちゃんに料理を振舞うこともできている。総ちゃんがいなくなってどこかがらんとしてしまったこの家だけれど、Aちゃんがよく訪ねてくれるせいか、前と同じくらいあたたかい場所のままだった。
Aちゃんは近所に住む女の子だ。わたしは彼女が赤ちゃんのときから知っていて、なんだか妹のようでもある。
総ちゃんとは同い年ということもあって、ふたりは小さな時から一緒に遊んでいた。総ちゃんが道場に通い出すとAちゃんもついていって道場のお手伝いをしていたし、傍目から見てもとても仲良しだった。
そんなふたりを見ているのが、わたしはとても好きだった。
けれど彼女は、総ちゃんたちがお江戸へと旅立ってから時折寂しそうな顔を見せるようになった。
他にお友達もいるみたいだけれど、総ちゃんたちとは毎日一緒に過ごしていたから仕方ないのだろう。その気持ちは、わたしにもわかる。
それに多分、なんとなくだけれど、Aちゃんは総ちゃんのことが好きなのだと思う。だから一層寂しいんだろう。
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文 - 何年経っても色褪せなくてついまた読み返してしまいます。ふっと笑えるところもあれば切なくなるところもあって、最後には幸せな気持ちになれて本当に胸がいっぱいになる作品です。 (12月2日 23時) (レス) id: 83faa383a3 (このIDを非表示/違反報告)
リィ(プロフ) - どんな幸せな終わり方だよォォォォォォ!!!!滅多に泣かないはずのボクが号泣するとかァ!!!めっちゃ面白かったです!神作品だぁ… (2022年5月18日 11時) (レス) @page40 id: a9f70234e2 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 序盤めちゃくちゃニヤニヤしながら見てたけど後半号泣してしまった…最高… (2022年5月15日 0時) (レス) @page40 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
ナナナ(プロフ) - なんですかこの神作品は。。。2時間かけて一気に読んでしまいました。。笑って泣ける、本当に本当に最高の作品でした。ありがとうございました、( ; ; ) (2022年4月26日 2時) (レス) @page40 id: 6431d8432b (このIDを非表示/違反報告)
なかむら(プロフ) - ぺさん» 遅レスすみません汗 書簡集、恋文の技術です!!森見さん大好きで……!同士の方と巡り合えてとても嬉しいです!もちろんこちらの夢小説はあちらの足元にも及びませんが(笑)、楽しんで頂けていたら幸いです! (2021年2月25日 21時) (レス) id: cefa07e7cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年3月4日 15時