私たち結婚しました [JH]4

＊ ページ8

「ありがとう」

笑う悪魔が遠くて。

無意識にその腕を掴んだ。

「え、どうした？」

悪魔の戸惑う声が聞こえて、

慌ててその腕を放す。

「ごめん、何でも無い。

ありがとね、送ってくれて」

急に恥ずかしくなって急いで中に入る私に、

無理すんなよって声が届いて振り返ったら丁度ドアが閉まった。

「あんたもね」

って私の声はもちろん届く訳なくて。

小さくついたため息とともに作業室へ戻った。

パソコンの前に座って、

放り投げたヘッドホンを拾って着ける。

流れっぱなしだった曲を全部消して、

新しく譜面に書くのは同じ恋愛ソングでも少し違う曲。

初めての片想いで戸惑う私の曲。

アルバムにいれるいれないは別にして、

どうしても今の感情を残しておきたかった。

好きなのに、簡単に口に出せなくて、

好きなのに、素直になれなくて、

好きなのに、届かない。

始まったばかりなのに、

あまりにも叶わない未来が見えすぎて、

諦め気味なこの感情を。

全て詰め込んで、勢いだけで書いた曲はあっという間に完成した。

「不器用だな・・・」

笑いながらその曲を聴いて、

叶わない未来を想像して辛くなって、

悪魔に会いたくなった。


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移行して2日でランキング5位。
本当にありがとうございます！
これからもどうぞよろしくお願いします。

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