夢と遊ぶ、幻を覚える【オリジナル】

カルテ09 ページ10

「そういうことだから、明後日はお母さんと来てね。」

本格的な治療について、か…。

「分かりました。」

電話を切り、お母さんに報告する。

「…そう。そうしたら17時に病院ね。」

お母さんは料理を作っていた。

匂いは、生姜かなぁ。

生姜焼き？

楽しみだなぁ。

自分の部屋に戻る。

この頃、お母さんが私に対して冷たくなった気がする。

私の、せいかな。

今日の話をする時もお母さんは一度として私の方を向いてくれなかった。

…病気のせいだ、きっと。

私が、治療法のない病気にかかったからなんだ。

昔から、両親との仲はよかったはずだ。

だけど、私が病気を宣告されてからお母さんは冷たくなった。

宣告を聞いてから、一番取り乱したのもお母さんだ。

偶然かもしれないけど、お父さんはその頃に単身赴任が決まった。

今は連絡も取らない。

取る気にもならないのかもしれない。

もしかしたら、病気になったなら苦しまずに早く死んでくれ、そう思ってるかもしれない。

はぁ…。

被害妄想か。

ふっと顔をあげたら、そこにこの間の悪魔がいた。

私に背中を見せ、首だけをこちらに向けている。

ポケットには手を無造作に入れてある。

悪魔は、揺れていた。

なぜなら、彼に実態はなかったから。

透けていた。

また、幻覚だ。

こんな時に…。

病気になったのはしょうがない、と思い始めてきた。

なのにこんな時に…。

私に幻覚を見せないで____。

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