友人 ページ7
◇◇
「うちで少しの間預かることになった」
Aと出会って2年が過ぎようとしていた頃。
ある日、仲良くしなさいと父が連れてきたのは、小柄で髪の長い少女。
「名前を聞いても良いだろうか!」
いつも通り俺が大きな声を出すと、それに驚いたのか、その子はビクッと肩を揺らす。
「…伊黒、小芭内」
「うむ、小芭内か!俺は煉獄杏寿郎だ!」
女の子にしては珍しい名前だと思いつつ、俺は小芭内に向かって手を差し出し、先程よりも声を抑えて話しかける。
それをたどたどしく握り返す小芭内は、俺の顔を見ないよう、必死に床に目線を向けていた。
◇
「小芭内、何かしたいことはあるか?」
父上に仲良くするようにと丸投げされてしまったため、俺は少しでも小芭内を楽しませてあげようと、何がしたいのか質問する。
「…」
しかし、なんと答えたら良いのか分からないのか、小芭内は不安そうに俺を見る。
そんな小芭内の片方ずつ違う目の色を珍しく思いながら、その目をじっと見つめ返していれば、ガラガラと乱暴に玄関の戸が開かれる音が聞こえた。
「よもや、喧しいのが帰ってきたな」
あの破天荒な彼女と小芭内が仲良くできるか、心配に思いながら困ったように小芭内に笑いかければ、不思議そうに首を傾げる。
ドタドタと廊下を走る音がすると、ピタリと一旦消えて、数十秒後、もう一度バタバタ聞こえ始める。
「杏寿郎ー!!」
「ッ!」
バンっと勢いよく襖を開いたAは、いつも通り俺の着物を勝手に着ている。
「廊下を走るな!」
「…ちょっと、先生みたいなこと言わないでよ」
いつの間にか、学校から帰ってきて直ぐにうちに来る癖が着いてしまったAは、女学生の袴は気に入らないと、いつも勝手に俺の着物に着替えてくる。
大きな声でぎゃあぎゃあと話すAが怖いのか、怯えるように俺に近寄ってくる小芭内。
「おっと、今日は先客がおりましたか」
そうニコッと笑うAの笑顔はとても可愛らしいが、俺はどうしても一つ気になることがあった。
「…どうしたんだ、その髪は」
腰ほどまであった艶のある黒髪は、今や肩にも付かぬ程短くなっている。
「あぁこれ?邪魔だから切ったんだよ」
そう言って髪に軽く手を通すAは、家で散々怒られたけどねとお茶目に舌を出した。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時