出逢い ページ5
◇
その後は、買い物に行くという母上と夜にある仕事のため寝ている父上の代わりに、今年産まれたばかりの弟の面倒を見ることになった俺たち。
Aはとても千寿郎を可愛がり、俺も2人と沢山遊んだ。
「もうそろそろお暇しようかな」
「そうか、では近くまで送る!」
空があかね色に染まった頃、Aはゆっくりと立ち上がる。
そして、Aが母上に挨拶しようと歩き出すので着いていくと、仕事のために起きた様子の父上に遭遇する。
父上は一目Aのことを見ると、一宮家の御令嬢かと懐かしそうに笑い、いつでも家に来なさいとAを気に入ったようだった。
「ばいばい、せんじゅろ〜」
そう千寿郎にも別れの挨拶をすると、Aは寂しそうに玄関に向かった。
◇
「杏寿郎のお家はいいね」
「ん?」
帰り道の途中、妙に静かだったAは、急に話し出したかと思えば、要領の掴めないその質問に俺は思わず聞き返す。
すると、杏寿郎のお家は暖かくて、優しいと笑うAは、突然足を止めて上を見上げる。
「ここの桜ね、私すごい好きなの」
そう言ってAは木に触れると、笑いながら俺を見る。
昼間にAが登っていた桜の木は、満開の花を咲かせていた。
「Aは花が好きなのか?」
「詳しい訳じゃないよ、ただこの桜が好きなの」
大きくて、何年も何年も同じ場所で、同じ季節に花を咲かせる。
私が生まれた時からあるというこの木は、私にとって不変の象徴だと、目を細めて俺を見た。
あまりにも美しい光景に俺が息を飲んでいると、それを手助けするように、Aの長くて艶やかな髪を風が煽る。
「昔よく遊んでくれた兄達は勉強で忙しいし、
唯一私の味方だったお祖母様は
冬に亡くなってしまった」
そんな自分の話を吐き出すように言い終わると、パッと切り替えるように笑って、俺の手を掴んで握りしめる。
「杏寿郎、桜に隠された意味って知ってる?」
隠された意味…?
学校に通い、勉学を習っているAと違って、そう言った内容は全く分からない俺は、どういう意味なのかと聞き返そうとすると、あっ!!という甲高い女の声に遮られる。
「A様!!」
奥様、発見致しました!と叫びながら、Aを慣れた手つきで捕まえる使用人らしき女性は、俺のことを見て驚いたように目を見開いた。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時