進展 ページ26
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「…む、A。なんだこの手は」
「なんだ、ではありません。
ここは外です」
先程とは打って変わって、凛とした顔で話すAは、自分の口元を手で覆っている。
怒らせてしまったかと、俺は反省しながら素直に誤り、悪いことをしてしまったなとAから距離をとる。
「…」
本当に怒っているのか、先に歩き出したAは、俺を待つことなく置いて行ってしまった。
「…」
「…」
お互いの想いが通じあったばかりだとは思えない程の空気に、俺は混乱しながらAの少し後ろを歩いていると、先程の場所から十本も歩かないうちに、Aはくるっと振り返り、俺を見る。
そして手の甲を見せ、俺の目の前に出すAは、何かを期待するように俺を見た。
「?」
「っもう、」
俺が分からず首を傾げると、痺れを切らしたように掌を返し、Aは俺の手を掴む。
「手を繋ぎたかったんですよ」
そうAは照れ臭そうに笑みを零しながら、キョトンとする俺の顔を見て、可笑しそうにまた笑う。
「恋仲の方達は手を繋ぐらしいの」
杏寿郎はそういうの疎いものね、と嬉しそうに俺の手を握るAの手は、小さくて冷たい。
「A」
「なんです、」
俺は繋いだ手に少し力を入れて引っ張り、俺の声に振り向いたAを引き寄せる。
そして俺は、繋いでいない方の手で少し顎を持ち上げ、Aの柔らかな唇に軽く口付けを落とした。
「…え、あっ、」
珍しく慌てた様子を見せるAに、今度は俺が耐えられず笑えば、悔しそうにこちらを見る。
「…許しません」
耳まで真っ赤にして怒るAは、悔しそうに俺の胸を軽く押す。
「初いな」
なんて愛らしいのか。
今すぐここで食べてしまいたい。
そんなことを思っていると、Aは驚いたように目を見開いて、さらに顔を赤くする。
「なっなん、え、それはっ…!」
「よもや!口に出てしまったか!」
そんなAの反応を見て俺が声を上げて笑うと、Aは今度こそ本気で怒ったのか、その日は甘味屋に連れていくまで口を聞いてくれなかった。
◇◇
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時