進展 ページ25
◇◇
「っA!!遅れて済まない!」
「いえ、構いませんよ」
宇髄とAについての話をしてから数日。
今日もいつも通り家の前で俺を待っていてくれたAに謝ると、今日はまた一段と可愛らしい服装のAが俺に笑顔を向ける。
「結婚してくれ!!」
「はい、今日は結婚…え?」
ピタッと可愛らしい笑顔をうかべて固まるAは、ゆっくりとその言葉を理解するように、結婚と数回口に出した。
「…冗談ですか?」
「よもや!
冗談で俺がこんなことで言うまい!」
まず、私たち交際もしていませんよね?と、困惑したような顔で俺を見るA。
今日、家を出るまで伝えるかずっと悩んでいた。
胸ポケットに入っている棒口紅を取り出し、俺はAに握らせる。
「俺は君が好きだ」
「へ、」
午前中。
突然、御館様に呼ばれ産屋敷に行くと、柱への昇格が決まった。
柱になるということは、今までより危険が伴う任務が増える。
明日、死んでしまうかもしれない。
だからこそ
「後悔したくなかったんだ」
そう全てを話し終わったあと、なかなか返ってこない返事に反応が怖くなり、この気持ちを伝えられただけでも満足していると、強がって歩きだそうとすれば、クイッと着物の袖を引かれる。
「…わ、私もお慕いしております」
顔を真っ赤にして、俺を下から覗くように見つめるAを、俺は思わず抱きしめる。
「ちょっと駄目です!」
ここは外ですよと、Aは俺の肩を叩いて恥ずかしそうに抵抗する。
しかし、いつまでも俺が離さないせいで諦めてしまったのか、とうとう力尽きたように俺の肩に頭を乗せた。
「…杏寿郎」
ふと俺の名前を呼ぶAに力を緩めてやれば、Aは少し顔を上げる。
「私、ずっと待っていたのよ」
そう恥ずかしそうに目を細めて笑うAは、瞳に少しだけ涙を溜めていて、美しいという言葉とは現せない。
そんなAに耐えられず、Aの肩を片手に手を添えながら、もう片方の手でAの頬を包む。
「…君は本当に愛らしいな」
上から覗き込むように距離を詰めれば、長い睫毛が縁取る、綺麗な瞳がゆらゆらと揺れる。
「…杏寿郎」
そんな熱っぽいAの声に、吸い寄せられるように桃色の唇に寄れば、なぜか冷たい感触が当たった。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時