検索窓
今日:4 hit、昨日:30 hit、合計:127,181 hit

逢瀬 ページ19








…これは、無意識か。






小さな手で俺の手を握り、前を歩くAに思わずそんな言葉を口に出してしまうと、Aはわざわざ振り向いて、俺との距離をずいっと詰める。









「ごめんなさい、今なんとおっしゃいましたか?」





俺の肩に手を置き、一生懸命背伸びをして話しかけてくるその様は、まさに俺の心臓を鷲掴みにし、Aは更に追い打ちをかけるように、俺の耳元に手を添えて、人混みで聞き取りずらいと至近距離で話しかけてくる。









「…っなんでもない!」







この時の俺は、恐らく茹でタコより赤かっただろう。



















「このさつまいものワッフルにしましょうか」


「む、君もそれでいいのか?」



店に入って、楽しそうにお品書きを見せてくるAは、俺の好物を覚えていたのか、さつまいもの洋菓子を勧めてくる。







「ふふっ実は、私もさつまいも大好きなの」



誰かさんのせいで、味覚まで似てしまったのかもと、好戦的に笑みを浮かべるAに、また胸が締め付けられる。









雪のように白い肌。


真っ直ぐ俺を見つめる深黒の瞳。


花が咲いたように笑う、その表情も。







全て俺の物にしてしまいたいと、胸からジワジワ熱いものが溢れ出す。









「君は、この数年間何をしていた?」



「どんな人と知り合って、どんな生活をしていた?」









「…教えてくれ、俺が知らない君の話を」






そう一気に質問攻めにすると、キョトンとした顔をした後、Aは嬉しそうに笑いを零した。



















「少し御手洗に行ってきますね」



料理も食べ終わり、紅茶を飲み終えると、会計を済ませる前に小さな鞄を持って席を立つAは、俺に一言そう言って厠へ向かう。








昔と比べものにならないほど、Aは女性らしくなったが、先程聞いた話の中には、色恋の話は一切存在しなかった。





Aに好きな男がいないのだろうか。





…もし居たとしても俺には関係ない話だが、Aを守れるくらい強くなくては、任せることは出来ない。



そんなことを考えながら、窓の外で行き交う人々を呑気に眺めていると、知らない数人の男に手を引かれるAの姿が視界の隅に映り込む。








「…は、」



一瞬停止する思考。






そんな中、必死に手を振り払おうとするAの怯えた顔を見て、俺は瞬時に机に金を置いて走り出した。









逢瀬→←逢瀬



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (182 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
707人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。