不変と可変 ページ17
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昔、君が暖かくて、優しいと羨ましがっていたモノは全て消えてしまった。
特に母上のことが大好きだったAは、どんな顔をするのかと怖くて見られないでいると、突然胸に衝撃を感じた。
「…杏寿郎」
ふと昔の呼び方で呼ばれたと思えば、いきなり背中に手を回され、潤いの滲む声で話すAは、俺の事を力いっぱい抱きしめる。
「あなたが辛い時、一緒にいてあげられなくて
ごめんなさい」
「っ、」
その瞬間、俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。
「…君が気にすることではない」
母上が亡くなって辛いのは君も同じだろう?と、俺が優しく頭を撫でてやると、泣き顔を見られたくないからか、Aは顔を俺の胸に押し付けた。
◇
「ははっ随分泣き虫になったな」
「…」
半刻は泣いていたであろうAを、からかうように話しかけると、右手をグーに握ってトンと俺の胸を殴る。
そんなにAに加虐心が煽られ、無理矢理こちらに向かせようとすれば、軽く手を払われてしまう。
「ふっ頑固なところは変わらないな!」
そう声を上げて笑う俺を、恨めしそうに見るAの姿は、月の光も相まって凄く幻想的に見える。
そんな場違いなことを俺が考えていることを悟ったのか、Aは呆れたように俺から離れて歩き出した。
「よもや!からかい過ぎたか!」
「…あなたは凄く意地悪になったわね」
◇
「煉獄様。
わざわざ送ってくださり、ありがとうございました」
家の門の前に着くと、先程の砕けた態度とは異なり、改まって別れを告げるAは、目を伏せて笑う。
「ああ、別に構わない!
…が、もう名前で呼んではくれないのか?」
いきなり変わった名前の呼び方に、俺がそう眉を下げて聞けば、Aはポカンとした顔で俺を見る。
「だから、杏寿郎と」
「私ももう十五。
さすがに、昔のようにとはいきませんよ」
そう言って悲しそうに微笑むAは、もうお互い子供ではないと俺を突き放そうとする。
確かに、昔のようにとはいかないだろう。
何より、俺とAの間には3年間も空白がある。
「うむ!では、それについては諦めよう!」
そう呆気なく引き下がる俺を見て、残念そうに背中を向けるAは、ゆっくり門を潜る。
「その代わり、
また君に会いに来てもいいだろうか!」
◇◇
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時