【短編集】ほしのかけら

復讐の3秒前 ページ36

僕がペラリと彼女の袖を捲る。
すると痛々しい傷や痣の数。
すると彼女は僕を睨みつけた。

「これで満足ですか」

その目は誰も信じられないと言う
冷たさが感じられた。

「ああ。君はさ、悔しくないの」

「……何がですか」

と、僕は傷口に触れる。
彼女は痛そうに顔をしかめた。

「こんなに傷つけられて。悔しくないの」

すると彼女の顔はぐにゃりと歪む。
その大きな目から涙が零れた。

「……そりゃあ悔しいです。でも、私に何か出来る訳じゃあない」

「出来るよ」

と、ナイフを台所から持ってくる。
それを見ると彼女は怯んだ。
僕はそれを床に置く。
殺す気は無いと知ってか、ほっと息をついた。

「これでさ両親を殺せばいい。
大丈夫。僕がするから、君は罪に問われない」

彼女はぶんぶんと首を振る。

「そんなこと出来ないです。
私なんかのために、あなたが……」

僕はテレビをつける。
すると少女誘拐事件のことが映し出されていた。

『早く帰ってきて欲しい』
『あの子は無事なのかしら』

少女の目がゆっくりと恨みを灯す。

「あいつら、これっぽっちも思ってないくせに。
……お兄さん。……殺してもらってもいいですか」

「ああ。復讐だ」

僕は頷いた。

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