検索窓
今日:14 hit、昨日:18 hit、合計:29,085 hit

石眼病 ページ18

この目は、人と目を合わすと、石にしてしまうようだ。
母も、先程までは硬直していただけだが、
今となっては、体全体が灰色に色付き、
ピクリとも動かない。

「これ、どうしようか」

その石は、持ち上げられないほどに重く、かさばる。
先程までは、命がそこに確かにあったはずのものでも、
こうなってみると、もう何も感じない。

「割って、川に流そうか」

この考えは、まるで人間とは思えないようなものだが、
その頃の私は、もうとっくに、おかしくなってしまっていたのだろう。
ハンマーをたたき落とした。

ポロリと腕が取れて、
命はここまでも儚いものなのか。と悟った。
とりあえず頭だけを袋に入れ、外へ駆けだした。
夜中の12時のことだ。

川の近くまで来ると、とんとんと、肩を叩かれた。
咄嗟に振り向いた。しまった。と思ったのはもう遅かった。

「ねえ。君な」

ピタリと静止した。服装から察するに、警官のようである。

「君何をしたんだ。待ちなさい」

その声も聞かず、私は無我夢中で駆け出した。
12時とはいえ、それなりに商店街の方には人がいた。

こんな時間に現れた少女を、物不思議そうに
見つめる人。しかし、その人達はピタリと静止した。
それに合わせて、あちらこちらで悲鳴が上がった。
しかしそれもボリュームが、少しずつ下がり、最後には静かになった。

辺りの人は、私の方を見た体勢で止まっている。
後ろから足音が聞こえ、振り向いた。
勿論、目を塞いでである。

「これは君がやったのか」

「はい」

「どうやって……なんだそれは」

え?と思わず目を開いてしまった。
警官は止まり、辺りは静まり返った。

私の腕は鱗に覆われていた。

ああ、私はメデゥーサなのだ。
物語では、必ず殺され忌み嫌われる存在。

涙が溢れた。
一人とはこんなに静かで悲しいものなのか、と。


END

Fiore del diavolo→←石眼病



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
38人がお気に入り
設定タグ:奇病患い , 短編集 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

兎危@ゆっ家族 - わぁぁあ、私が提案したのが載ってる...(当たり前?)読み方はあってますよ!皆さん読み方を付けてコメントしていたので間違ってはいないと思います! (2018年5月10日 17時) (レス) id: 556657c7c7 (このIDを非表示/違反報告)
空百合@募集企画運営のため低浮上(プロフ) - やっぱり何回読んでもめっちゃ面白い(´;ω;`)私には書けないなぁ…… (2018年5月4日 4時) (レス) id: 3dba0349b8 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 綺夜音さん» ありがとうございます! (2018年3月28日 9時) (レス) id: 46c09611b4 (このIDを非表示/違反報告)
綺夜音(プロフ) - 面白過ぎて、恐縮しましたよ!一気読みしちゃいました!!面白いので、更新楽しみにしています。 (2018年3月26日 19時) (レス) id: 8bca99ae07 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - アリスさん» ありがとうございます! (2018年3月15日 20時) (レス) id: 46c09611b4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みき | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年3月12日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。