奇病患い 【短編集】

花散らし病 ページ11

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花散らし病(はなちらしびょう)

愛しく思う人がおり、またその人と両想いの場合に稀に発病する。


相手を『愛しい』『好きだ』と思うたびに、体から花が咲き乱れる。

明確に言えば患者の周りに花がパッと咲き、しかし瞬時に散ってしまうため『花散らし病』。


花を散らすたびに体力が奪われていくので、症状が酷ければ死に至る場合もある。

完治するためには相手と別れる他ない。

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とある女性が、家の片付けをしていた時です。
そこで、日記帳を見つけました。
それを手にすると、
懐かしそうに微笑み、
パラパラとページをめくりました。


×月×日
おかあさんに、にっきおつけなさい。
といわれました。
かきます。
わたしわかたおもいをしています。
わたしわそのこのことがすきです。
なまえわ××××くん。


肝心の名前は、鉛筆でぐちゃぐちゃに
塗りつぶされています。
しかしその名前は、その女性の、
頭に、しっかりと染み込んでいます。

────忘れられないものですから。

そして、またページをめくりました。


×月×日
わたしは××××君のことが心底
好きなようです。
見つけたら、自然と目で追ってしまいます。
そして、目が合ったら、反射的に逸らしてしまいます。
何でそんなことをするのか。
と、自分が嫌になります。


そして、女性はまたページをめくりました。
その間にも、
たくさんのことが綴られていました。
どれも微笑ましい内容でしたが、
それには興味のないようでした。


×月×日
今日はとてもいい日です。
何故なら××××君が、
私に告白してくれたからです。
相思相愛だったんですね。
と、私達は笑い合いました。
ところで最近、
体の調子が少しおかしいような気がします。
お母さんに言って、
また病院に行くことにしましょう。


ここのページを見ると、
女性は辛そうに顔を顰めました。
そこで一度日記帳を閉じ、
大きく深呼吸しました。
そして、またページをめくりました。

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私の嫌いな恋愛系ですね。
やっぱり私の経験不足が仇となるのでしょうか……

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