夢幻 ページ15
side A
『…師範』
「…よく来たね」
『師範…!』
「こっちへおいで」
『師範…なんで…生きて…?』
「よく頑張った」
『…』
「柱になったそうじゃないか」
『……はい』
「…疲れたろう、私の膝でお眠り」
『…いえ、そんなお恥ずかしい姿は見せられません』
「随分とでかくなったもんだ」
『…頑張って鍛えましたから』
「…」
『………それにしても、ここはまた相変わらず酸素が薄いですね』
「お前を鍛えるためだよ」
『はは、師範の血鬼術ですか』
「いやいや、ここが高いからだ」
『冗談ですって』
「…幸せだね」
『……はい、師範』
「…」
『…』
「…その様子だと、もう気づいているな」
『……幸せは続きません』
「………」
『本当はずっとこうしていたかった』
「……」
師範は柔らかく微笑んだ。
『ここは夢の中ですね』
「…そうだな」
『現実だったらどんなによかったか』
「……はは、泣くのはよせ」
『師範』
「…なんだ」
『あたしは強くなりました』
「………」
『これからも強くなります』
「……うん」
『師範のおかげです』
「………」
『…感謝しています』
あたしは頭を下げ、それから立って玄関に行った。
「…私もお前に言いたいことがある」
『………』
背中側から声が聞こえる。あたしは振り返ることはしなかった。きっと現実に戻れなくなってしまうから。
「…私は死に損なった気分でね、随分生き永らえていた」
『………』
「お前が殺してくれた時、ようやく救われた気分だったんだ」
『………』
「…………愛して、いるよ」
『……師範…』
「行っておいで」
そういうと師範はあたしの背中を押した。
その勢いであたしは走った。もう振り返ってしまわないように。泣き顔をみせないように。
あれは幻覚だ。師範はもう居ないんだ。あたしが殺した。あたしの手で。ずっと悔やんでいた。だけど。
師範は救われたと言っていた。ならばあたしがすることは。たったひとつしかない。
これからも刃を振るい、人々を護るんだ。師範はその為にあたしを育てた。
『ぅぅっ…ふっ……っ、』
ああ涙が止まらない。でも頑張らなきゃいけない。
どこか遠くから、もう戻ってくるんじゃないぞ、という声が聞こえた気がした。
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アメちゃん(プロフ) - ギャァーーーーー続き気になるじゃんかぁーー (2020年9月17日 22時) (レス) id: 4db45bcbc3 (このIDを非表示/違反報告)
うべぇん - 鱗滝のジジイに彫ってもらった麺てwwww誤字脱字が面白すぎてわろけてましww (2020年6月13日 0時) (レス) id: 5654052a0b (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ぎゆさね推しさん» 頑張りまっす! (2020年4月8日 17時) (レス) id: ebc4954dcf (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ゆりなんぽんさん» はい!あいざいます! (2020年4月8日 17時) (レス) id: ebc4954dcf (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 鬼滅の刃 loveさん» うわああざます号泣 (2020年4月8日 17時) (レス) id: ebc4954dcf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2020年2月26日 21時