その面影3 ページ8
「は…
はい!」
堂島の質問に恵は答えた
「私の田舎は冬は雪が多くて夏にいっぱい採れた野菜を冬に食べられるように保存食を作るんです
天日干しで乾燥させて…
それを手伝ってる時…
オーブンで作るやり方をお母さ…母に教わりました
半分に切ったプチトマトに岩塩をまぶして120度の低温オーブンでじっくり乾燥させると甘さが増して凄く美味しくなるのでテリーヌのアクセントになると思って…」
「うむ…
トマトには旨味物質のひとつでグルタミン酸が含まれており乾燥させることでその旨味が凝縮され舌に感じる甘さは格段に跳ね上がる
四宮の『9種のテリーヌ』は新鮮な野菜の生きた美味さを味わう料理だったが
(このルセットに込められたのは時間経て生まれる保存食の良さ…
同じ『野菜のテリーヌ』というメニューでありながら新鮮さの美味と熟成による旨味
まったく異なる切り口で野菜にアプローチしている!!)」
「…………」
「心に染み入るような味…
恵ちゃんの優しさが溢れるようですね」
「ああ…
四宮さんが『レギュムの魔術師』だとしすれば恵ちゃんはｰｰｰｰ」
自然に恵みをささやかに与えてくれる
チョン…
「レギュムのコロポックル」ｰｰｰｰ!
「いいえ違います!
に幸せを運んでくれる…」
ジッ
「レギュムの座敷わらし」です!
「あるいは…
雪深き土地から野菜の恵みを届けにやってきた」
あいっ
「レギュムの雪ん子」!!!
上からドナード､日向子､関守が恵のテリーヌのイメージ(?)を出した
「今は冬じゃないからダメだと思いまーす!」
「つか何で妖怪系ばっかなの…」
3人につっこみを入れる水原
それを一部始終見ていた恵
「(うそみたい…
失敗ばかりで自信が持てなくて学園の落ちこぼれだった私の料理を
いつも本や雑誌で見て憧れてた人たちが美味しいって言ってくれた…)」
恵は口元を手で隠し泣いた
ニッと笑ったAを見て恵もニコッと笑った
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作者名：レンサ | 作成日時：2019年2月13日 0時
