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し「だってとしみつは、Aがそうやって考えてること知らんのでしょ?」
『いや、一応伝えたよ?としみつくんは私に頼られたいらしいってりょうくんに教えて貰ってすぐ。……あ、でもほら、なんかとしみつくんって指摘されたく無いらしいし、全部りょうくんに聞いたとは言わずに』
物事を直接的に表現しがちな私にしては、譲歩した表現で言ったらしいことを察して、私の性格を最もよく知る2人は感嘆の声を上げた。
て「具体的になんて言ったの?」
『あんまり私たち、意思疎通上手くいってないよね?としみつくんは私にどうして欲しい?って』
し「え、Aって人に要望聞けたんだ」
『言っとくけど物凄い失礼かましてるからね今』
でもまあ私もそう思う。なかなかの譲り具合だ。ただ。
し「で?としみつは?」
『そこなんだよね』
溜息を漏らしつつ、頭を抱える。
『浅谷さんはそのままでいいよって』
し「……ん?矛盾してない?」
『いや、そーなんよ』
もう私にはお手上げだった。
『たしかに頼って欲しいっぽいってのはりょうくんの曲解だったとしてもさぁ……少なくとも謝るなとは言ってたんよ』
し「聞いたんでしょ?」
『聞いた』
し「のに、そのままでいいって?」
『そう。訳が分からん』
しかも泣きそうな顔で言うのが、さらに訳が分からなかった。
なんだか、私はいつもとしみつくんを泣きそうにばかりさせている気がする。
そう思ったのも、距離を置こうと決断した理由の一つだった。
もしかすると、私の存在はとしみつくんの心を笹くれ立たせるものなのかもしれない。
て「あ!」
今までケラケラ笑っていただけだったてっちゃんが急に大声を上げたものだから、私としばゆーは勢いよく振り向いた。
し「なにぃ!」
て「だからあんなにスンナリりょうとの同棲決めたんだ!」
『あー!たしかに!』
し「何の話?」
1人だけ乗り遅れているしばゆーは不思議な顔をしていた。
て「この人さぁ、今まで俺から離れるとか無いわって感じやったやん」
し「うん。気持ち悪いことにね?」
『一言余計ね?』
て「でも、今回りょうの家に移るってなった時は、めちゃくちゃ即決だったの。変だと思ったんだよ、俺」
し「え、Aはそれ意図してたの?」
『ううん。でも無意識に、自分を変えようとはしてたんかもしれん』
言われてみればの気付きに、さっさと相談しとけばよかったと思い知った。
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作者名:蚕虫 | 作成日時:2023年10月23日 10時