【年末年始休みます】みなさん、クリスマスのご予定は? ページ34
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し「Aは?どうすんの?」
『家でゴロゴロしてるよ。どうせ皆、デートで忙しいでしょ』
クリスマスは女の子と過ごしたいタイプらしいメンバーに、元より期待はしていなかった。そもそも私は、クリスマスに何をすればいいのかよく分からないし。
て「誕生日はちゃんと祝うって」
『それ、ホント?去年プレゼントって言ってポケカ渡してきたの忘れてないよ?私』
喧嘩を始めようとしたところで、後ろから肩を叩かれた。思わず勢いが削がれる。
り「俺、ちょっと残って帰るから。A、先帰ってて」
『え、待ってちゃダメ?』
り「ダメ。遅くなるもん」
事情を知らないりょうくんは、優しさから笑ってくれたけれど、こっちとしては誰に一緒に帰ってもらうか悩みどころだ。てっちゃんか、しばゆーか…………あ。
『としみつくん、一緒に帰らん?』
と「えっ」
名古屋で助けて貰って以来、私の中のとしみつくんの頼もしさは倍増していた。
夜に買い物に行くことになっても一緒に来てくれるし、人混みの多いところでは「掴んでていいよ」と服の裾を差し出してくれる。
弟みたいだと思い込んでいたけれど、弟みたいなところと、兄のようなところ。二面性のある人なんだと分かってきた。なんとなく、そういう所がてっちゃんと似ていて、だから2人は気が合うんだろうなって。
連れ立ってスタジオを出てから、としみつくんがすぐ口を開いた。
と「いいの?俺、絶対今日はてつやのこと誘うと思ってたわ」
『え?なんで?』
と「昼に絶対なんか奢らせるって言っとったやん」
『あぁ!アレね、Uberでってこと。私のUber、てっちゃんのクレカも登録されてるから、勝手に頼めるんよね』
と「なにそれ(笑) 魔法のカードやん」
『そうだよ。としみつくんもてっちゃんと喧嘩したらいつでも言って?魔法発動するから』
と「浅谷さんだけは敵に回さんとこ」
話していると、長いエレベーターの待ち時間もあっという間だ。助手席に乗り込み、手を擦る。
と「寒い?」
『うん。寒くない?最近冷え性やばい』
と「あー、分かる」
ガサゴソとポケットからカイロを取り出した彼は、ポンと私の掌にそれを置いた。
と「持っといていいよ。もうだいぶ温いけど」
『ありがと。カイロとか、もう何年使っとらんかな』
と「え?なんで?」
『え?自分で買わんくない?』
と「買うよ、全然」
家にあるカイロのストックの話を聞きつつ、私は悴んだ指の先を温めるために苦心した。
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作者名:蚕虫 | 作成日時:2023年10月23日 10時