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さやりんの好きなもの押し売り選手権!! ページ19




り「名古屋行こっか」


この男はいつも唐突だ。


り「なに、その顔(笑) 」


9時きっかりに鳴った部屋のノックはいつもの数倍煩くて、ノロノロと起き上がってやっと開けたところでコレだ。

そりゃこの顔にもなる。


『私は家居るから……』

り「ダメだって。昨日の夜、ちゃんと誘ったじゃん」

『あの誘い方はガチとは思わんでしょ』


逆に酒盛の最中で言っていた、「明日名古屋行こっかな〜」を本気で捉える人間が居たら連れて来て欲しいくらいだ。

りょうくんは笑顔を崩さないまま、扉にもたれた。


り「いいの?せっかく金山の鉄板焼き、予約したのに」

『40秒待って支度するから』


良いように掌で転がされているけれど仕方ない。とにかく私は肉が好きなのだ。

手早く着替え、玄関で待つりょうくんの元に向かう。


り「おー早いね……って、え?着てくれたんだ」

『え?違った?』


前に言われた通り、りょうくんとのご飯だからプレゼントしてもらったワンピースを着たんだけど。

チラリと顔を見ると、そこには満面の笑みがあった。


り「何にも違わない。良い子だね、A」

『だから犬じゃないんだって』


これまたプレゼントされた靴を履いてから気付く。


『あ、スッピンは勘弁してね』

り「大丈夫。そこまで期待してないから(笑) 」


外に出てみると、ビックリするくらいの青空があった。

岡崎に帰ってきて、初の外出だ。あまり晴天が得意じゃない私にとってはあまり良くない天気だけれど、普通に考えれば都合がいいんだろう。


り「良い天気じゃん」

『ね』


カバンからサングラスを取り出してかけた。目が痛すぎる。


り「じゃ、行こっか」


数ヶ月前より随分慣れた助手席に乗り込み、私は軽く頷いた。









ウィンドウショッピングをして、ご飯を食べて、またウィンドウショッピングをして。

気が付けばもう午後3時だ。

近くの見通しの良いカフェに入り、私たちはコーヒーを楽しんだ。


り「足、痛くない?」

『大丈夫。一応これでもこういう靴で踊ってたんだから』


なんならストラップがあって幅広な分、余裕だよと伝える。


『そろそろ行く?』


私の問いかけに、りょうくんは首を振る。


り「ううん。ちょっと待ってて。俺、残りの買い物は一人で行くわ」

『え、足平気だよ』

り「Aが居ると色々都合悪いの!じゃ、待っててね」


口を挟む間もなかった。りょうくんは次の瞬間には、もう店から出て行ってしまっていた。

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作者名:蚕虫 | 作成日時:2023年10月23日 10時

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