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り「Aは多分、男のプライドみたいなのをあんまり分かってないタイプだね」
………ん？
『なに、男のプライドって』
り「てつやがあんまり持ってないやつ」
『それはそれでてっちゃんが怒りそうだよ』
りょうくんは嘘だよと笑って言った。
り「言いたいことあるなら言えばいいし、隠す意味ないと思ってるでしょ。Aは」
『まあ……そうだね。言いたいなら言った方が良いと思う』
り「男はね、逆に黙るってことに価値を見出すこと多いんだよ」
うーん…………
『めんどくない？』
り「あーあ、言っちゃった(笑) 」
ケラケラ笑うりょうくんは完全に悪役顔だ。
り「例えばさ、線路に落ちた人を助けようとして、「今から助けます！」って大声で叫んでから助ける人と、無言で誰にもバレないように助ける人が居たとするじゃん」
『うん』
り「Aはどっちも同じって思うでしょ？」
『え、うん。だってしてること一緒じゃん』
り「まあね。でも、としみつは違うんだよ」
なるほど、今の例えで分かった気がする。
『無言実行にしたい人だ、としみつくんは』
り「そうそう」
なるほど、それなら分かる。そういう子は何人も居た。言わないことに価値を見出すという考え方の子。
『…………ってことは、としみつくんは私にバレずに頼りにされたいの？』
り「まあ、俺の予想だよ？」
でも、当たってそうな気もする。だからこそ私が何を言っても、「もういいよ」としか言わなかったんだろう。張本人に明かすなんて、無言実行のタブーだから。
『でも……私多分、一生としみつくんには頼れないと思うけど』
り「なんで？」
『だって、としみつくんに言う前にてっちゃんだけで解決すること多いよ。そんなわざわざ迷惑書けなくていいし……そもそもとしみつくんだって、わざわざ砂かかりに来なくていいのに』
またりょうくんは愉快げに笑った。
り「相性悪いなぁ」
『相性悪いの？』
り「うん(笑) 」
そうなのかな。でも確かに、「もういいよ」と言ったとしみつくんの顔は苦々しげだった。
『そっか。ならもうあんまり近付かん方がいいね』
り「そうなの？」
『え？りょうくんが言ったんじゃん』
相性が悪いって。それなら、わざわざお互い嫌な思いして近くに居る必要無いし。
り「ま、Aがいいならいいかな」
伸びをしたりょうくんは、徐に帰ろっかと呟いた。
眠気はどこかへ行って、なんだか妙な胸のざわめきだけが残った。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月6日 3時
