Idol 2 (ページ31)

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小「そんな不貞腐れないの」

暫く会っていない小関さんの声は、少し歳をとっていた。

小「お誘いだよ、ただの」

『何の？』

私の後輩をたくさん支えているはずだ。きっと、アイドルを心から楽しめる子達を。

小「A、もう1回アイドルやらない？」

それなのに、何故か小関さんはいつも私に執着する。

小「今年、うちの事務所も20周年でしょ。ひなフェスのゲストに、サプライズでOGを多めに呼ぶつもりなの。そこに出ない？」

『……私、もうステージに立つつもりは、』

小「てつやくんたちと一緒に、何回かイベント出てるの、知ってるからね」

ああ言えばこう言う。何も変わっていない姐さん気質に、苦笑が溢れた。

『もうお誘いじゃないじゃん』

小「そうだよ。強制だね、ほぼ。今の世代、アンタに憧れてウチに入ってきた子が山ほど居るんだから」

てっちゃんが私の肩を叩いた。見上げると、替われとジェスチャーをされる。携帯を返すと、彼はニヤリと笑った。

て「あ、マネティ？」

小「うん？」

て「いいよ。A、出るって」

『は、ちょっと！？』

何を勝手に！と言いそうになったところで、てっちゃんのデコピンを食らった。

『いっ……！！』

て「この人、たまにでもそういうキラキラしたとこ出さんと劣化するから」

小「それはそうね。この前の動画も、リズムサボってたの丸分かりだったし」

『……うーるさいなぁ。分かってるよ』

自分でも思った。アレだけ命を削って得たリズム感が、たかが5年でここまで薄れるんだって。

そしてそれを、少し勿体無く感じた部分もあった。

『分かった。出る』

としみつくんが息を飲んだのが聞こえた。

『でも、ひなフェスって今月末でしょ？間に合うの？』

小「間に合わせる。そっちこそ、ある程度実力取り戻してもらわないといけない訳だけど、大丈夫？」

『…………ボイトレしたいです』

小「分かった。ダンスは？」

『大丈夫。筋トレすれば戻るの分かってるから』

二言三言業務連絡を交わし、私は電話を切った。あーあ、今月は忙しくなること確定だ。

て「良かったやん」

り「ヤバいね。アイドルのA、生で見れんの？」

し「絶対虫さん喜ぶやん」

と「てかあの日のあれでリズム感無いって言われんのヤバ……」

ゆ「お腹減ったなあ」

口々に適当なことを言っているけれど、なんとなく皆からの応援を感じる。

溜息と共に、私は筋トレメニューを脳内で作り始めていた。