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し「そっかぁ」
しばゆーは遠くを見ながら、ぼんやり相槌を打った。
『引いた？』
し「え、別に引く要素は無くない？(笑) 」
へにゃりとした笑顔にホッとする。そうか、引く要素は無いんだ。
『だから……ん？何の話してたんだっけ』
し「昔から納税者のAがメガドン料金立て替える話」
『ああ、そうだ。実家の話だ』
し「すんごい無視すんじゃん」
ポンと手を打ち、笑って見せた。
『というわけで、実家は物理的にも心理的にも無いの。強いて言うなら、幼馴染のてっちゃん家かな。実際しばゆーに追い出されてた時も、ママに頼み込んで泊めてもらってた』
し「あ、そーなの？」
『だから大丈夫だよ。ごめんねって言うならむしろ、てっちゃんの実家に行って』
し「わかった」
それからは暫く静かに248を歩いた。もう夜も遅いから、車通りも少ない。
し「俺、思うんだけど」
『ん？』
し「Aがカメラマンしてくれて、良かったなって」
『……なに、優しいね(笑) 』
し「いや普通に……Aが居ると明るくなるから」
『…………そんなこと、思っとったの？』
し「うん」
あ、照れた。半笑いで腕をつつくと、「やぁーめろぉ！」と叫ぶ生き物が面白くて、私は声を上げて笑った。
『とりあえず笑ってなってお兄ちゃんに言われてたからねぇ。それに、普通に楽しいもん。今の人生。お兄ちゃんのこと思い出す時くらいしか泣かない』
し「逆にAって泣くの？」
『しばゆーは私をなんだと思っとんの』
し「動く人形」
『そうだったわ』
女の子扱いなんてされたことはない。ずっとしばゆーはそうだった。だから私は、しばゆーになら打ち明けられたのかもしれない。
『なんか、私もしばゆーのそゆとこ好きだよ』
し「ん？」
『ちゃんと人の中身見てくれるとこ』
し「…………もしかして俺ら今、結構恥ずい？」
『……………だいぶ恥ずい』
ケラケラ笑いながら歩いていると、煌々とした明かりが見えた。
し「まあ、良いじゃん。別に泣き顔見せて、本気で馬鹿にする奴は居ないし」
『うん、それはそう』
し「もう……その実家の呪い的なのは解けてるんだからさ。普通に気にせんでいいと思うよ、俺は」
『しばゆーって良い人だね』
また照れた。ムズムズする口を見ていると、笑いが込み上げてくる。
『ありがと』
し「いやまあ、全然ハイ」
やっぱりてっちゃんの親友なんだなぁ。チラリと盗み見た横顔は、どこか私の幼馴染に似ていた。
【盗撮】としみつがイベントで大遅刻したのでブチギレます→←・
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月6日 3時
