ジャン負け深夜メガドン ページ1
・
巻き込まれただけのジャンケンに負けた。しかも車の無いこの状態で。
し「ねーぇ！うざい！Aだけでいいやん！」
『しばゆーだけでいいやん！』
り「可哀想すぎる。だって30分かかるもん」
し「せめてチャリ無いの！？」
と「バカお前、飲酒運転じゃん」
し「Aに運転させるから！」
ゆ「それでもニケツでアウトだよ！」
私は知っている。こういう時の東海オンエアは頑固だ。頷くまで……というか、買い物を終えて帰宅するまで、私たちを許さないんだろう。ジャンケンに負けただけなのに。
り「じゃ、買い物リスト送るからよろしく！」
明日の動画で使うらしい大量のリストを前に、しばゆーと肩を落とした。かき氷機なんてどこで使うの。
し「タクシーは？」
て「ルール違反」
し「なんのぉ！」
しばゆーが戻ってきて以来、皆しばゆーをいじるのがさらに好きになったようだ。それに私は巻き込まれている。
『しょーがない。さっさとすまそ』
と「浅谷さんのが男らしいじゃん(笑) 」
皆のいってらっしゃいに見送られて、私たちは家を出た。
し「あーー……うざすぎ」
ぺたぺたとサンダルを鳴らすしばゆーは、どこか遠くを眺めていた。そういえば、2人きりで話すのなんて久々だなぁと実感する。そうやってノスタルジックになっていた所で不意に、バッとしばゆーがこっちを見たものだから、私は思い切りよろめいてしまった。
『なに？！』
し「いや、そういや言えてなかったから」
『なにが』
し「あの……先月とか。普通に家追い出しててごめん」
『あぁ、それか』
先月。しばゆーが本格的に脱退するかもしれないなんて、皆も深刻になった時期だ。
話し合いをするというから、私は定期的に家を出ていた。
てっちゃんは居てもいいと、むしろ居ろと言っていたけれど、それは違うからと私は毎度出ていた。しばゆーも私があの家に住んでいるのは承知だから、察したんだろう。
し「話し合いの時だけかなって、思ってたけど。りょうくんから、Aが普通に1ヶ月帰ってないって聞いてごめんってなった」
相変わらず謝るのが下手な人だ。一応怒らせないように伝える、ごめんね。申し訳ないという気持ちより、怒らないでねの気持ちを強く感じる。
でも私は、そんなしばゆーが嫌いじゃなかった。人が怒ってるのが苦手だという気持ちは、痛いほど分かるから。
『今日の荷物、重いの持ってくれるなら許す』
へにゃりと目の前の相好が崩れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月6日 3時
