てつやにバレずに漫才 ページ7
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今日も今日とて、ニートの私はてっちゃん家に入り浸る。
10月にもなったというのに、てっちゃんは未だ半袖だ。信じらんない。一方しばゆーは謎の卵色のジャケットを羽織っていた。りょうくんはお気に入りの東海オンエアTシャツにチェックシャツだ。
私はと言うと、てっちゃんの高校時代のジャージ上下姿。まずまずダサくて人に文句を言える格好ではなかった。
て「A、なんか仕事せんの？」
『いや、ホントにせんとかん。でもバイトだと迷惑なったりするんよね』
り「芸能界残んなかったんだね」
『元々20歳で辞めるって決めとったからね』
り「へーぇ。なんで？」
純粋な好奇心が私を射抜いた。答えようとしたその時、パッとてっちゃんに口を摘まれる。
て「ポテチ、付いとる」
庇ってくれたらしい。不器用な優しさが可笑しくて、私は少し笑った。
し「でも、今の姿見とったらアイドルとか思えんくない？」
り「それはそう。俺が今まで見た事ある女の子の中で1番可愛いけど、俺が今まで見た事ある女の子の中で1番雑だもんね」
『え、そんなことないでしょ』
り「あるよ」
りょうくんはニコニコ笑った。空気を読んでくれたのか、はたまたてっちゃんの誤魔化しが上手くいったのか知らないけれど、私の卒業理由については話が流れたらしい。
『トイレ〜』
て「行っトイレ〜」
『うわ、キツ』
て「は、ひど」
フラフラと部屋の外に出て、トイレに向かう。用を済ませ、扉を開けると。
「う、わ」
目の前に人が居たらしく、思い切り扉をぶつけてしまった。
『ごめん！』
よしはるだろうと思い、勢いで謝った。それなのに返事が無くて疑問符が浮かぶ。よしはるじゃない？でも、この家には他に男は居ないし。
「あ、」
扉から覗くと、鋭い目をした男の子が立っていた。同年代くらい……というより多分。
『としみつ、くん？』
と「浅谷さん」
動画で見た事のある、てっちゃんの仲間だった。
『はじめまして。浅谷Aです』
と「あ……鈴木俊光です」
『てっちゃんの友達やんね？部屋行かんの？』
と「ああ、うん。行こうと思ってたんだけど、てつやの母さんに用事頼まれて」
『あ、よしはるの部屋？持ってこうか？』
俊光くんの手にはマグカップがあった。勉強しているらしいよしはるへの差し入れだろう。彼はそこまでよしはると仲がいい訳ではなさそうだし。
私は彼の手からマグを奪って、よしはるの部屋に向かった。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月5日 19時
