としみつが買ってきてくれたケーキ争奪ドラフト会議 ページ25
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『ただいまー……って、え！ケーキだ！』
てっちゃん家に来てみると、皆が机の周りに集まっていた。そして、その中心には色鮮やかなケーキたちが勢揃いしている。
『美味しそ〜……って、あれ？！私の分もある？！』
て「そう。としみつが買って来てくれた」
『え！やった！ありがと、としみつくん』
と「あ、うん」
未だに目の合わないとしみつくんは、俯いたまま頷いて、すぐに視線をケーキの方にやってしまった。
苦笑いして、私はざわくんからカメラを受け取る。
虫「それでね、今からケーキ争奪ドラフト会議しよっかなって」
『ドラフト会議？指さすの？』
虫「そう。さやりんも決めた？」
『……決めた！』
というより、言われる前から決まってた。いちごの乗ったドーム型のケーキが、キラキラと私を誘っている。
虫「じゃ、いい？」
ざわくんに頷いて、私はじっと狙いを定めた。
「「「せーーの！ドン！」」」
て「うわ！！」
すごい被りようだ。一人勝ちしたのはざわくんくらい。私はとしみつくんとしばゆーと被ってしまった。
と「マジかあ」
虫「やっぱね、このチョコはやばいと思ったよ」
1番被っているケーキをめぐり、皆がきゃいきゃい騒ぐ。私は画角を調整しながら、それを聞き流す。
どうやら結束バンドでくじ引きをするらしい。随分本格的でちょっと笑ってしまった。ジャンケンでもいいだろうに。
チョコケーキのクジが終わり、敗北したてっちゃんが一頻り騒ぐと、私たちの番になる。
て「はい、どーぞ」
し「じゃ、俺これ」
と「浅谷さんは？」
『としみつくんが買って来たんだからとしみつくんが先選んで』
し「なんか俺が悪いみたいやん」
と「じゃあ、これで」
し「いくよ？せーーの！」
と「やったああ！」
としみつくんの雄叫びが響く。私のくじは真っ白だった。
残念だけど、まあそういうこともあるよね。なんて切り替えて、次に目を引くケーキを探す。
レモンのも美味しそうだなぁ。やっぱりモンブランかなぁなんて。
視線を彷徨わせる私を、何故かとしみつくんはじっと見つめていた。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月5日 19時
