急にりょうの家に行った【しょうもないドッキリvol.3】 ページ21
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『あれ？りょうくん』
り「A？」
ビックリした。こんな偶然あるんだ。
ちょっと用事があって訪れた豊橋のコンビニで、作業着姿のりょうくんとバッタリ出くわした。
『お仕事中？』
り「ううん。今終わったとこ……ちょっと待っててよ。ご飯行こ？」
『うん。じゃあそこの公園で待っとる』
り「分かった。着替えて車取って戻ってくるね」
仕事終わりだというのに笑顔を崩さないのがすごい。
正直私も割とそういうポーカーフェイスは得意な方だけれど、それはあくまでもアイドルをしている時限定だ。プライベート……というか最近なんか、グダグダするしイライラもする。
でもりょうくんにはそれがない。ホントにすごいと思う。
見知らぬ公園のベンチに座り、私はぼんやり空を眺めた。
次のクリスマスを迎えれば、アイドルを辞めてもう3年だ。あまりに色々ありすぎた。
東京の友人から来る連絡もめっきり減った。
それでも、めちゃくちゃ可笑しい男友達は増え続けているんだから、まあ楽しい人生なんだろう。
アイドルを辞めた時は、こんな事になるなんて思ってもみなかった。
全部、てっちゃんのおかげだ。……まあ一部、てっちゃんのせいとも言えるけれど。
り「おまたせ」
りょうくんが小走りでやって来た。
『早いね。ごめん、急がせた？』
り「いや、全然。何食べたい？」
顔を覗き込まれたから、私は思い切り笑って見せた。
『しいたけ！』
り「はい、意地悪。本当は？」
『んー……なんかガッツリ系？』
り「ガッツリ……中華とか？」
『いいね』
苦手な食べ物も知る仲だ。
り「ねぇ、待って。なにそのTシャツ。ダサすぎない？」
『東京土産だよ』
り「誰に貰ったの」
『へきほー』
り「元アイドルに何をあげとるだ、あの男は」
ズケズケとした物言いも出来る仲だ。
り「あ、待って。行こうと思ってた中華、今日休みかもしれん」
『えー、もう中華の口になっとる！』
り「なら宅飲みにする？チャーハンと麻婆豆腐と唐揚げくらいなら作れるよ」
『最高じゃん！なんなら私、普通にりょうくんに料理教えて欲しい』
り「いいよ。Aなら器用だしすぐ出来るようになるでしょ」
『やったね』
宅飲みも気軽に誘われる仲だ。
でも。
未だに私はてっちゃん以外に、アイドルを辞めた理由を話せていなかった。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月5日 19時
