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いや、正直私もびっくりしたよ？
声だけでこんな大騒ぎになるなんて。
てっちゃんの部屋でくつろぎながら、私はどんどん増えていく視聴回数を眺めていた。
軽いノリでてっちゃんが上げた動画は、意外にもいとも簡単にファンの人達に見つかった。アイドルがYouTuberになった、と。
『YouTuberにはなっとらん』
カリカリマウスを回す私に、ポテチをつまみながらしばゆーが尋ねた。
し「ゆくゆくは一緒にやっとく？」
『ならんよ？私もう出役はせんし』
て「勿体ない」
てっちゃんにしばゆー。この2人はYouTuber……らしい。私も詳しいことはあまり知らない。
なんせ、アイドルを卒業して地元でボンヤリしていたら、いきなり電話で呼びつけられたのだ。
「カメラマン、興味無い？」なんて。
無いに決まってる。でも、てっちゃんは本当にしつこかった。基本寂しがりなのだ。1人で動けるけれど、誰かが居るならその方が嬉しいらしい。
だから私は彼の謎のモノマネ動画のカメラマンをやらされ、そこでした咳払いで「女が居る！」なんて物議を醸すハメになった。
そして、その釈明動画を上げてみればコレだ。
『まぁ、ここまで来たら今更隠しても仕方ないしね』
て「いや、やばいって。事務所に怒られるとかない？ヤダよ、俺。チャンネル消せとか言われたら」
『いやもう事務所は関係ないし』
し「大丈夫大丈夫。むしろ有名になれるやんね」
『人の声で売名せんでくれる？』
アイドル時代の私を知っているてっちゃんは心配そうだけれど、しばゆーはそんなの気にする素振りもない。というかこの男、私が一応女だということすら気にしていない気がする。さっきから尻が丸出しだ。
まあ、それが楽ではあるのは昔からだった。
しばゆーに出会ったのは、てっちゃんが高校に行ってた時だ。だから結構付き合いは長い。てっちゃんにおもろい奴がいるから！なんて、無理やり知り合わさせられたのだ。
ちなみにその初対面で、しばゆーはボンヤリ私の顔を眺めたあと、ヘッと鼻で笑ってきた。そんな対応をされたのは久々で、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えている。
そう。昔からしばゆーは私をアイドルとか女とかそういう目で見ていなかった。
て「なんでしばゆーはそんなドンと構えてられんの？」
し「いやー、俺、Aがアイドルって感覚ないんよね。ずっと綺麗な動く人形だと思っとるから」
…………だそうだ。ムカつきはするけれど、逆にその距離が心地よかった。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月5日 19時
