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「…あ、あ、あありがとう!」
このままではダメだ。なかなか離れない彼の腕を振りほどいて勢いよく体を離す。
口を尖らせいかにも離れるのが惜しいって顔をしているゾムくんから視線を逸らし散らばった資料を拾うためにしゃがみこむ。
それに習ってゾムくんもしゃがみこんで資料を集め出す。
そしてぶふっ、といきなり吹き出す。
「盛大にぶちまけたな」
多分見た感じ。綴じてあるはずの資料はほぼ綴じられていなかったのか結構な数の紙が床一面に散乱している。
「ファイリングしないでどうすんのよね」
「ペーパーファースナーが止まってへんかったんちゃう」
そう会話を交わしてからお互い黙々と拾う。
……の、だけど。
「なんで先輩捕まらへんの?」
「バレバレな手にわざと捕まるわけないでしょ?」
「捕まれや」
さっきから資料を拾う私の手に彼自身の手を重ねようとしているのがバレバレなのでうまく回避しているとまた口を尖らせるゾムくん。
「王道やらせてーや」とぶつくさ言いながらまた資料を拾う。
ぶちまけた資料を拾い終わり順番を整えて今度はしっかりファイリングする。
ゾムくんのいう通りペーパーファスナーが緩んでて投げ出されたと同時に散乱したらしい。
もう一冊必要なものがさっき取ったところの隣にあるからそれを取るため脚立に乗ろうとするとそれをゾムくんに制止される。
「先輩はホンマに俺に頼らんよなぁ」と盛大にため息を吐く。
トントンと言いゾムくんと言い、なんか今日ため息を吐かれてばっかだ。
脚立からひらりと降りたゾムくんがほい、と取ってきたファイルを渡してくれる。
お礼を言うと優しく頭を撫でられ、その後軽くかき乱される。朝のトントンとは違う撫で方だ。
……比べるのよくない。しかもゾムくんの方にときめくのもどうなの、自分。
資料室を出て並んでオフィスへの道を歩く。
「そういえばなんでゾムくん資料室に?」
彼は今手ぶらだし必要な資料があったとか、用があったとは思えない。
「先輩が資料返すの頼まれてるの見たから、一人で行って悲しくなってへんかな〜って思ってん」
「だから急いで作業終わらせて飛んでった」と何とも甘ったるい顔をして言うから目のやり所に困って無駄に眩しい光が入り込む窓を見る。
さっき、素直に捕まってやるんだったなと思ってしまったのは悔しいから内緒だ。
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007(プロフ) - どうもです~。遂にですね…嬉しす ぎてガッツポーズかましちゃいました…!相変 わらず言葉選びが素敵で…。言い過ぎてく どい様ですが、有馬さんのペースで無理せず更新してくださいね! (2019年12月12日 1時) (レス) id: 02706c0822 (このIDを非表示/違反報告)
有馬(プロフ) - 不眠みんみんさん» いえ、困惑させてしまったみたいですみません。早く修繕されるといいですね(^^) (2019年11月13日 18時) (レス) id: adf3e71480 (このIDを非表示/違反報告)
不眠みんみん(プロフ) - 有馬さん» なんかスマホバグってるみたいで他の作品もそうなってますね…勘違いしてすみません! (2019年11月13日 18時) (レス) id: 94afcdf064 (このIDを非表示/違反報告)
有馬(プロフ) - 不眠みんみんさん» はじめまして。コメントありがとうございます。しっかりフラグを外して作成していますが外れていませんか? (2019年11月13日 17時) (レス) id: adf3e71480 (このIDを非表示/違反報告)
不眠みんみん(プロフ) - あれ…私のスマホバグってんのか分からないんですけどオリフラ外してますか? (2019年11月13日 0時) (レス) id: 94afcdf064 (このIDを非表示/違反報告)
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