【d!】ヘビースモーカーと嫌煙家【z/m】

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平日の仕事中か終業後に会うことはあっても休日に彼と会うことはなかった。
それもおかしいなと思う部分もあったけど、一番あって欲しくない真実に私は見て見ぬ振りをした。この時ばかりは自分の鋭さを恨んだ。


休日、トントンと高校の同窓会に向かう途中。街で彼の姿を見た私は普段は見れない彼の休日の姿に胸を踊らせ声をかけようとした。


けど、それは叶わなかった。
私といる時とは違う素敵な笑顔を見せる彼の隣には同じく素敵な笑顔を見せる女の人の姿。


ああ、やっぱりなと思った矢先、ふと隣の女性のお腹に目を向けるとぽっかりと膨らんだそれ。お腹に手を添え愛おしそうに笑う彼女の笑顔はとても綺麗だった。
彼は彼女持ち、どころか、妻子持ち、だった。


サッと血の気が引いて私はその場にうずくまり口元を押さえる。
それを見たトントンも慌てて私の横にしゃがみ込む。


嗚咽をもらす私に何があったかわからないトントンはぎこちなく私の背中をさすりながら落ち着いて座れる場所へ連れて行ってくれた。


それから今までのことを少しずつトントンに話すと彼は自分のことのように辛そうな顔をして話を聞いてくれた。
最後には「お前は悪くない。しっかり罪悪感を抱けてるんやから」と言ってくれたが、彼の優しさが逆に辛かった。


それから彼とは話をつけ別れる事が出来たけど、引き止められることはなかった事が結局自分は遊びだったその事実を物語ってたし、なんで？と思う自分もいた。


一年経った今ではもう吹っ切れる事が出来た。と言うと嘘になるけど、前ほどウジウジすることはなくなった。
とは言え、恋愛には臆病になった。悲劇のヒロインぶるわけじゃないけど、また人を騙してしまうんじゃないかと思ってしまう。


彼の奥さんやもう産まれてきたであろう彼らの子供を、知らなかったとは言え騙していたことになるわけで。その罪悪感は消えない。


それから自己嫌悪なりストレスなりでやめていたタバコを再開してしまうという最悪のクライマックスを迎えた。

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