歩道と歩道 ページ10
気付いてしまった。
福本くんは私にないものを沢山持っているということに。
A「美味しかったあ…」
すっかり満腹になった。
そして突如眠気が襲いかかる。
福本「誘ったん僕ですから！払いますって！」
―としつこい福本くんを制して会計を済ませた。
店の外は相変わらず曇り空。
深夜特有の空気が流れる。
明日は晴れるだろうか。
折角の休日に曇り空を見上げたくはない。
後で天気予報を見よう。
もし晴れたら、どこか買い物にでも―
そこまで考えを巡らせたところで反対側の歩道に人影が見えた。
福本「次はご馳走させてください、」
A「あ、うん」
思わず会話が上の空になる。
あのシルエットはきっと―
いやでも、違うかもしれない。
車が数台通り過ぎて視野が広がった。
A「…あっ」
福本「え？何ですか？」
ほら、やっぱり。
彼の姿がそこにあった。
車道を挟んだ歩道と歩道。
距離は離れているはず。
それなのにあの香水が香ったような気がした。
視線が交わる。
そこでようやく思い出した。
連絡を返していない、もはや文面を読んでもいないことに。
A「福本くん、私…」
そこまで言いかけた時、横断歩道の信号が青色に変わった。
夜の街に心音が響き渡ってしまうのではないかと不安に駆られる。
彼の隣にいるのは合コンに参加していた―
藤木だったか藤井だったか思い出せない。
1歩ずつ着実に距離が縮まっていく。
額に滲む汗がそれに比例する。
だけどそれは夏のせいなんかじゃない。
縞模様のど真ん中。
出会ってしまった。
藤原「あれ？こないだおった子ちゃう？」
A「あ…どうも」
そう声をかけられて藤木でも藤井でもなく藤原さんだったことを思い出した。
A「…こんばんは」
横断歩道の中心で立ち話なんてできる訳もなく、ただただすれ違うだけ。
ただそれだけの出来事がスローモーションのように感じた。
末澤「…Aさん」
その声に振り返った。
信号は点滅し始めている。
末澤「こっち」
A「…えっ、」
訳も分からないまま腕を引かれて元いた歩道へと戻った。
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わさび醤油(プロフ) - そるとさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…完結まで是非よろしくお願いします。 (2022年10月1日 9時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - わさび醤油さんの小説とても好きです。綺麗な文体でどの場面も不自然なく想像しやすくて。キュンとしたり苦しかったり…今回の作品も更新楽しみにしております！ (2022年10月1日 1時) (レス) id: 09fd0b4eab (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - ゆなさん» ありがとうございます。完結までお楽しみ頂けると幸いです！ (2022年9月18日 8時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 新作楽しみにしていました。今作も最後まで応援しています。 (2022年9月17日 21時) (レス) @page18 id: 5405f5cefd (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - イルさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。これからも更新頑張りますので、最後まで読んでいただけると幸いです。 (2022年9月14日 2時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年9月5日 4時
