小説家Aのありがちな短編集【オリジナル】

＊ ページ8

　はぁ、と盛大にため息をつく。自分が校門をくぐる頃にはHRなんてとうに終わっていて、先生からも説教をくらい、もう鬱でしかなかった。なんだか早々に学校から帰りたい気分になる。
　幼馴染と、共に登校した彼女はギリギリ間に合ったみたいで、やっぱり自転車と並走するのは大分難しいと少女は実感する。

「んな落ち込むなよ〜！」

　遅刻を免れたアンタに言われても嬉しくない。そんなことを呟きながら不機嫌な顔で頬杖をつく少女の機嫌を取るように、少年は少しばかり間を置いてから一つ提案をする。

「そだ、今日部活ねーから一緒に駅前の喫茶店行こうぜ。アイツがあそこのモンブラン美味かったって言っててさ」

　また彼女の話か、良い加減にしろやバカップル。心の中で悪態をつく少女。彼女は幼馴染の恋人であり、クラスの中でも中心人物的な立ち位置。スクールカースト最底辺の少女とは掛け離れた存在で、きっと自分に勝ち目などない戦いだったのだと思いながらも、相変わらず幼馴染に諦めのつかない自分に腹が立った。こうなったらヤケ食いだ。散々食べて奢らせてやる。

「アンタが奢りなさいね」

「しょーがねぇな、転校最後に俺ちゃんが奢ってやんよ」
「そんなら行く」

　即答だった。悪かったな食べるの好きで。

「ホントめっちゃ食うよなお前。可愛いけど」

　そんなこと言ってると彼女に嫌われるぞ。そう言うと幼馴染の仲だから許してくれるだろ、と少年が笑う。自分はあくまでも幼馴染なだけでなんでもないんだなと改めて実感。駄目だ、そんなこと言われると泣きそうになる。


「……転校しても会い(愛)に来たら良いのに」
「来いっていうなら考える」





小説家Aのありがちな短編集その4。
恋心も転校前の学校に置いていきたい少女。

お題【転校】【自転車】【めっちゃ食う可愛い女】【モンブラン】【愛】【鬱】

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している


←転校前のティータイム

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す