夏色の君は知っている

浴衣 ページ11

う、上杉くんが死んでた？

そして、それをなんで私に言うの？私は断じて殺した覚えはないっ！

「ふぅ、これも立花彩最強伝説だね...」

え、なにそれ。
私は強くないけど...黒木くんの方が断然強いよ。

「まぁ武力的には、ね。で、アーヤ？上杉に何したの？」

えっとー...夏祭りに誘われて、OKして、電話がきて、心配されて...楽しみってことを伝えて...？
それくらいだった気がするなー...

「なるほどね。上杉の死因は心拍数の急上昇、ってとこかな。心配はいらなそうだね。」

それなら良いけど...


「夜遅くに悪かったね。上杉と夏祭り、楽しんでね。」


笑を含んだ黒木くんの声を聞き、私は受話器を下ろした。
上杉くん、大丈夫かな...。


＊＊＊

カレンダーを毎日眺め、ついにやってきた、大きく花丸のついている日。


7月10日。


夏祭りだ。


わくわくとドキドキで溢れそうになる心に蓋をし、緊張で爆発しそうな頭を落ち着かせる。



箪笥の奥底に大切にしまわれた、浴衣を取り出す。
昨年、新調しまだほとんど着ていない新品。



白地に青い花がさりげなく描かれていて、その中をツバメが飛んでいる。


それに合わせるのは赤い帯。自分で選んだのもあって、結構気に入ってるんだ。




髪の毛は...結おうかな。暑いし。

軽く一本で編み込んで、お団子みたいにする。
うん、これでよし。着付けも出来たし、準備ＯＫ！




...これで大丈夫だよね？
何故かな、いつも顔を合わせている友達なのに、馴染んでいる上杉くんなのに、気合いが入る。


上杉くんはどんな格好で来るだろう。
浴衣？でも動きやすさを重視して洋服でくるかも。
どっちでも良いんだけどね。気になるのはなんで？





様々な感情が横切るなか、私は下駄を履き、外へ足を踏み出した。



湿度の高い、むーんとした空気で浴衣が肌にくっつく。








ふぅ...良い夏祭りになりますように。






☆☆☆



まさかツバメ柄の浴衣が「恋を運ぶ」という意味を持ち合わせ、それが今夜、大きく役立つなんて、彼女は思いもよらないだろう。





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橘綾

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