５ ページ46
.
『ち、違うんです、』
『あら、好きじゃなかったの？』
『いや、それも違って……！』
段々としどろもどろになっていくチソンが可哀想に思えて来るけど、この全く悪意のない質問の矛先が僕に向くのも恐ろしくて窓の外を眺めていた。
隣で「クンさん、デザート美味しいですね」と言って来るAの言葉に、事態を収集しろという意味が込められていることは気付いていたけど、ただ「そうだね」と微笑んで返しておこう。
僕にどうしろと言うんだ。無理に決まってる。
もう一度Aが「クンさん」と僕の名前を呼んだ時、遂にチソンが立ち上がった。
胸の前にぎゅっと拳を握って、少しだけ前のめりで主張を始めようとする。
なんだなんだ。
『違うんです。す、好きなんですけど、僕はただ、その……そういうのじゃなくて……そう！あ、憧れているだけで……！』
……く、苦しい。
なんて苦しい言い訳なんだ。
聞いているだけの僕が鉛を飲み込んだみたいに苦しくなってしまう。
いや、鉛なんて飲み込んだ事は今まで無いけれど、実際飲み込んだらこんな感じなんだろう。ううっ……
チソンの言う憧れは実際その通りの意味を持つのだとは思う。
……そうだとは思うんだけど、決してそれだけではないことを僕達はよく知っていた。
チョンロのお母さんはにこにこしながらチソンを見ているし、チョンロは椅子の背にひっくり返るくらい笑っている。悪魔かな？
言い訳を重ねていくチソンを『ああ、この子は知らないんだな……』と眺める事しか僕には出来ない。
Aは中国語での会話がとてつもなく下手なだけで、僕たちが何を言っているのかなんて、ほとんど完全に理解できているのだ。
僕やチョンロが通訳を買って出たのも、文化が異なる二人の間で齟齬が出ないよう、話の中でつまずくような場所に説明を入れているくらいでしかない。
そもそもどうしてチソンは、あれだけ横目でAを見ていた癖に何も気付かないのか。
Aはチョンロのお母さんの話を、時差も無く頷きながら聞いていたじゃないか。
節穴か？
チソンの目は節穴なのか？
ただAを見ていただけなのか？
いや、それは……そうか……
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1497人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せの(プロフ) - みなみんずさん» こちらこそありがとうございます〜！わ〜い、そう言ってもらえるととても嬉しいです〜！！オタクライフ楽しんでいきましょうね〜〜！ (2020年12月14日 14時) (
レス) id: b15808b38b (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ちゃこさん» ありがとうございます〜！本当ですか？NCTもみんな面白いのでどんどん推し増ししていきましょうね！(？)これからも頑張ります！ (2020年12月14日 14時) (レス) id: b15808b38b (このIDを非表示/違反報告)
みなみんず(プロフ) - せのさんのお話をいつも読まさせていただいてます。私も最近NCTにハマりまして、せのさんのお話にたどり着いてからすごい勢いでハマっていきました！いつも素敵なお話ありがとうございます！これからも楽しみにしております！！ (2020年12月13日 14時) (レス) id: 9876ae2084 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃこ(プロフ) - せのさんのお話読みたいが為にNCT勉強してきました！やっと最新話に追いつけて感無量です(T ^ T)NCTもほんとに素敵なグループで、出会わせてくれたせのさんに感謝です！！これからも楽しみにしてます！ (2020年12月10日 22時) (レス) id: f83f7a2a16 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せの
| 作成日時：2020年12月10日 10時
