この少女、ドMにつき【wrwrd】3rd

ヒャクジュウ ページ21

舞台に立つ時屋さんは、とても輝いていた。
感情を表すのがめっちゃ上手い。
私も自分なりに演技は得意な方だと自負している、が、この舞台において、彼女より輝ける人はいない

自分の出番になると、私はいじめられていたところを助けてもらう。
そのお礼にと、ドレスを差し出すのだ。

『このドレスを、貴方様にきっと似合いますわ…!』

芝居がかった台詞は私をドレス売の少女として成り立たせる。
これで私の出番は終わり、舞台裏へ下がろうとする。
ガシッと手首を掴まれた。
台本にない行動で、驚いてしまう
まだスポットライトはあたっている。

『あ…あの…?』

声をかけると時屋さんは、うつむいていた顔を上げた。

「…ありがとう!!」

綺麗で、眩しいくらいキラキラした笑顔で言われた。
それは演技じゃない、私に向けていった言葉
なら私も

『…こちらこそ』

優しく笑った。

それからはシナリオ通り、シンデレラはドレスを纏い舞踏会へと足を運んだ。
そこに待ち受けるはおう……

『何あれ魔王…?』

不敵な笑みを浮かべるグルッペンさん、まるで魔王
いきなり出てきた生徒会長に、みんなびっくり、体育館はざわざわと騒がしくなる。

ここからが、カオスの幕開けだった。

グルッペンさんは登場した時屋さんの前に迷いなくつかつかと歩み寄る。
この時本当はシンデレラから行くはずなのだが…

「君は何を求める?」

思っきし台本無視!!
いきなりの事に時屋さんもキョトン顔やで!!

「え…と…」

戸惑う時屋さんに、詰め寄るグルッペンさん、顔がいい!!!二人共顔がいい!!画になり過ぎてお客さん達目がしょぼしょぼしてる!!

「愛か?金か?信頼か?幸せか?ここに来る者たちは必ずこう言う。
幸せが欲しいと、君は何を求める?」

もう一度問うグルッペンさん、まるで時屋さんを試している様、時屋さんは目を伏せて少し考える。
ゆっくりと顔を上げて、彼女ははっきりと言った。

「私は、全てを求めるわ。
生涯をかけて、求め続ける。
貪欲に生きてやるわよ、それが私の生き方ですもの」

まっすぐグルッペンさんの目を見つめる。
はー顔面お似合いすぎて写メ取りたい。
グルッペンさんはその答えに笑った。
面白いというかのように、ホントマジで魔王にしか見えない。

「求め続ける、いい答えだ。
君に興味が湧いた、一曲踊っていただけるかな?」

グルッペンさんは跪き時屋さんの手を取った。
あの二人一生推すわ。
そうして、方向性を見失った劇は幕を閉じたのだった。

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