【マギ】神出鬼没なマギ4.〜アルマトラン編.後編〜

第196夜 君が君であるために ページ49

誰もいなくなった死んだ世界で。
その地を踏み締める者が1人いた。



「もう、5年が経つのか…」



あの日の惨劇から、はやくも5年が経とうとしていた。


地下に行けない僕は、ただただ世界を彷徨う。


お腹が空いたら魔法で食べ物を作り出して、そうやってこれまでの5年間を生きてきた。



「A、決心はもうついたか?」



けれど、この5年何もなかった訳じゃない。




戦いが終わって駆けつけてくれたレイメスに、



『イステカ大陸に来るか?』



って誘われた。



けれど、僕は心を病んでしまっていたから。差し伸べられた手を振り払い逃げてしまったのだ。



それでも声をかけてくれた彼に、僕は言ったのだ。




『もう少しだけ、待って』

『お前の仲間が数年後、ここを発つはずだ。それまでに決めておけよ』



そしてその時がきたのだろう。



彼と一緒にイステカ大陸に渡るか。
それともこの地で1人朽ちていくか。



「僕はこの5年間、十分世界を堪能した気がするよ」

「そうか…」

「隊員の皆が死んだことは分かってるつもりだったのに、どこか探してる僕がまだいたんだ」




忘れることのない記憶。

もっと一緒に生きることができたはずなのに。

助けを求めても知らぬ顔をしたシバを、僕はあの頃許せないでいた。




「でも、5年間。この世界を彷徨って思い知ったよ」



もう、それが受け止めるしかない現実だった。



「本当に…、死んじゃったんだね…っ!!」



探しても探しても見つかることのない現実を突きつけられた。



思わず溢れそうになる涙を必死で堪える。



「ずっと探してたのか? 」

「うん…!!」

「こんなところに1人だと、余計に心が病んでいくぞ」



ぽん…、と乗せられた温もりのある手。



「俺は決めたぞ!!」


そして突然の叫びに驚き、心臓が跳ね上がる。



「お前が来ないって言っても俺が強制的に連れて行く!!」

「そっ、そんな勝手な!!」

「俺が決めたんだ!! もう決定だ!!」

「別に言われなくても行くつもりだったし!!」



何故かムキになって言ってしまった僕の言葉に、とても嬉しそうに笑うレイメスがいた。




「まずはAの心の病を治さないとな」

「そこまで深刻じゃない…」

「いや、かなり重症だ」



差し伸べられた手を受け止めることの大切さを知った。







受け止めるのも、その人がその人であるために必要なことなのだ。









ねぇ、みんな。
僕、もう少しだけ生きてみようかな…。

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